宇宙混沌
Eyecatch

第10話:林檎の瞳、命の赤 [2/5]

「月末の土曜日は空いているか?」
 作戦決行まであと十日ほどとなった日の夜。とわの父が珍しく夕食の席で口を開いた。
「私は空いています」
「ごめ~ん、先約ある」
 その日は狸平のパーティー当日だ。
「ではせつなは予定を空けておけ」
「私は行かなくて良いの?」
「一人居れば良い。つまらん用事だが、連れが居ないのも様にならないと邪見が煩くてな」
「邪見さんを連れて行けば良いのでは」
「勿論連れて行く。その上でだ」
 邪見はああ見えて優秀な秘書だ。長年の勘から、何かを察して「家族を連れて行くべき会」だと判断したのだろう。
「わかりました。お供します」
「お母さんは入院してるもんね。せつなに押し付けるみたいになってごめんね」
「とわの友人に迷惑をかけるよりは良いだろう」
 とわは食べ終えると、食器洗い機に皿を突っ込んで、自分の部屋へ。理玖からLINEが来ていた。
『今週末ドレス買いに行きませんか?』
『もちろん! 楽しみにしてます』
 遠慮の言葉はもう何度も口にした。ここは素直に買ってもらおうと決意する。
「あ~~~でもうちの会社のライバルなんだよね」
 理玖はまだそのことを知らない。何なら、とわだって理玖のことを大して知っているわけではない。
「好き、なのかな」
 理玖は自分のことを好きだとは思う。相手からの下心に、少女は思いの外敏感で、それでいて平気な顔をするのにも長けている。
 しかし、とわは?
「あ~~~。もろははどうやって竹千代さんと付き合うことになったんだろ」

闇背負ってるイケメンに目が無い。