理玖のとわとの共寝の頻度は徐々に増える。理玖が二度寝る間に一度だったのが、毎度に。三日か四日に一度しか眠らなかった理玖が、二日に一度は眠るように。
相手が犬妖怪だからって盛りすぎだろう。儂が理玖の体を乗っ取ればりおんの耳は塞げるが、寝ている間中ずっとは流石に集中が続かない。頼むからこれ以上くっついて寝ないでくれ。とわが際どい寝言を言いませんように!
そんな願いも虚しく、今日もまた鼓動が聞こえる。霊である儂らに睡眠は必要無いが、規則的な音はりおんの意識を曖昧にさせていた。
儂の膝の上に上半身を倒してうとうとしているりおんの頭を撫でながら、儂は意識を他に逸らす。音だけならともかく、とわの温もりまで伝わってきていて敵わん。
しかし、理玖もよく体力が保つものよ。一族は儂らが死んで残るは理玖だけだし、子を成してくれるのはありがたいが……。
……そういえば、もう一月以上、休みなく交わってないか? とわはどちらかというと人の子寄りなので、そろそろ月のものがあってもおかしくないと思うのだが……。
ただの添い寝なのか事後なのかは、理玖が目覚めるまでの長さで判別できる。間違いなくこの一月は三日以上続けて交わらなかった日が無い。血の臭いはせんし、月のものの最中に無理矢理しているわけではないだろう。とすると……。
りおんから伸びた紫色の糸が、その存在を主張するかのように揺れた。
そういえば何かの書物で読んだ事がある。仏の道では、死者は輪廻転生といって、再び仮初めの世に魂を戻すのであったか。
これは、急いだほうが良いのかもしれんな。
幸い、儂が理玖の体を操っている間はりおんには何も聞こえぬ。目を動かしたときも儂の瞼の動きとは連動しなかった。念じるだけで理玖の口を動かせるなら、とわに直接伝えることもできよう。
そうして儂は、その日からこっそりと理玖の口を動かす試みを始めたのだった。