宇宙混沌
Eyecatch

麒麟丸パパの苦悩 [3/4]

 一体誰と、など愚問であった。理玖が殺生丸の娘の白い方に執心なのは見て知っていた。どうも毎回船の上のようだし、男になった理玖が機能試したさに人間の女をわざわざ連れ込んでいるとは思えない。どうにかしてとわを船に乗せ、そのまま番となったのだろう。
 と、いうことは、今日もまた聞こえているこの鼓動はとわのものである。頼むからくっついたまま寝ないでくれ。これ以上とわの寝息と鼓動をりおんに聞かせ続けるのは――
「女は殿方と褥を共にしてはいけないのではなかったのですか?」
と聞かれる羽目になるから嫌だったのに、回避策を打つのが一歩遅かった。
「えー、それは、その、なんだ……良い場合もある」
「それはどのような場合で?」
「…………そ、そういえばりおんは何故理玖を裏切ったのだ?」
 りおんに睨まれる。話を無理矢理逸した上に、話題選びに失敗した。
「理玖が私の為に力と命を尽くしてくれたことは感謝しています」
 つん、とりおんはそっぽを向いた。
「それでも、理玖は父上にそっくりでした。人の気持ちを決めつける所が。……父上と違って勘が良いので、あながち間違っていない所が余計に腹が立って」
「待て、今儂めちゃくちゃ悪口言われてる?」
「そうですね」
「父が悪かった……」
「もう後の祭りです」
 向こうを向いたりおんの肩から、糸が伸びていた。仮初めの世の方向ではない。冥道の奥へと続く、ラベンダー色の糸が。
 何だこれは。いつから繋がっているのだろう。触れてみようとしたが、儂の指はするりと通過してしまう。りおんも気付いていないようだ。
「父上?」
「ああ、いや、そうか……」
「すみません、言い過ぎました」
「構わぬ。儂のしたことに変わりはない」
 りおんは儂の胴に抱き着く。
「もう二人きりなのです。仲良くしてください」
「ああ」
 しかしそれも、時間の問題だろう。儂はそのラベンダー色に、胸騒ぎがした。

闇背負ってるイケメンに目が無い。