宇宙混沌
Eyecatch

第3章:誓約は免罪符にはならない [2/3]

「なんだか怒る気失せちゃった」
「ごめんね。でも合意の上だし、ちゃんと育てる気もあるし」
「うん。出来ちゃったものは仕方ないし、二人が幸せならそれで良いよ。戦国は令和に比べたら娯楽も少ないしね……」
「とわ様で遊んだみたいに言われるのは心外ですね。おいらとわ様との子が欲しかったんですよ」
「いやそれも令和の価値観的にはどっちもどっちだけど。だいたい六百歳と十五歳って」
「私の父上と母上も似た様なもんだよ~。ていうか、父上は母上のこと十歳くらいから育ててたし」
「育ててた!?」
「犬夜叉くんとかごめも二百歳と十八だったじゃないの」
 おばあさまに言われ、草太は完全に沈黙した。かと思いきや、顔を上げておいらの目を見る。
「理玖さんが誓ってくれるなら良いよ。とわのこと幸せにしてくれるって」
 信用されていない。理由は解っている、この見た目だ。仕事でも女や南蛮人に間違われて嘗められるし、良い男を手に入れることしか頭に無い女が寄ってくるばかりで[ろく]なことが無い。だから対外折衝では顔周りだけ形を変えてやり過ごす事も多いが、とわ様もおいらの元の姿を好む女の一人だった。
 女みたいな顔の奴が金や力を持っている。それだけで、話したことが無い奴等にも嫌われた。富や美貌を武器に周囲を誑かしている。そんな言葉の意味を理解できるようになった頃には、それは既に噂ではなく通説になっていた。
『言わせておきなさいな』
 アネさんはこんな助言をくれた。
『折角綺麗に造ってもらったんだから、上手くお使い。口説き文句の一つでも覚えれば、楽に進む仕事もあるだろうに』
 今思えば、それはおいらが欲しかった言葉ではなかった。
「理玖?」
 取り繕う言葉を探していたが、おいらは嘘が吐けない。
「殺生丸も似た様なことを訊いた」
「え?」
「おいらはその時も誓わなかった。誓いは免罪符にはならねえ。愛や貞操は誓っても良いが、それでとわ様がどうなるかどう思うかは運ととわ様次第だろ」
「理玖……」
「……すいやせん。言葉が過ぎました」
「いや……」
 草太は俯く。
「軽々しく訊いて悪かったよ。僕は聖職者でも神様でもないのに」
「おまたせ~」
 芽衣が戸を開けた。萌さんは果物や菓子の乗った盆を手にしている。
「どうしたの? みんな黙って」
「……いやー、理玖はちゃんとプロポーズしたって言い出して、私全然覚えてないから怒らせちゃって」
「やっぱりお姉ちゃん酷いお嫁さんだー」
「あはははは」
 白々しい嘘だが、とわ様の機転に助けられた。
「こんなお姉ちゃんだけど、好きになってくれてありがとう」
 芽衣が果物の盛り合わせから少し皿に取って、おいらの前に置く。
「……おいらも、こんな大人げない奴ですけどね」

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