第2章:父親 [3/4]
「そうじゃ! よもや麒麟丸の分身の子供など宿すとは」
「理玖は理玖だよ。もう麒麟丸とは関係な……」
いや、そういえば麒麟丸に言われて帰省したんだった。
「とにかく! ちゃんと合意の上だし理玖は真面目に働いてるだけだし、悪い事なんてしてないよ!」
「合意の上……」
「ちょっと待ってせつな、なんで意外そうなの?」
「いや、理玖がとわのことを女として好きなのは分かっていたが、とわもそうだったのか?」
「…………言われてみれば」
理玖の言葉にときめかなかったわけじゃない。でも、自分からキスしたいとか抱き締めてほしいとか思ったことはない。理玖が望むなら、あげるのも悪くはないかなと、思っただけで。
「流されてますなあ」
「もっと自分を大切にしろ」
「そんな~。大事なもの捨てたみたいに言わないでよ~」
「貴重な子無しの時間を捨てただろ。子供を育てるのは大変なんだぞ。私はこの二月ほどくろの世話を手伝っているだけだが、それでもわかる」
「私だって芽衣のお姉ちゃんだったんだから知ってるよ~。あと犬の世話と一緒にされても」
「麒麟と半妖との子供の世話の方が大変そうじゃがの」
はあ、と溜息を吐き、私は身を後ろに倒す。
「おめでとうって言ってくれたの母上だけ!」
せつなも私の隣に寝転んだ。見ると、笑っている。
「すまない。とわが望んで得たのなら、まずは祝ってやるべきだったな」
言ってせつなは私のお腹に手を置く。
「今どのくらいだ?」
「三ヶ月くらいって言ってた」
「麒麟の子も十月十日で生まれるのか?」
「どうだろ」
せつなの方を向き、その胸に顔を埋める。
望んで得たわけじゃない。もちろん、要らないわけじゃないけど、何もかも受け身な姿勢で流れてきた事が、今更ながら不安になった。
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Written by 星神智慧