宇宙混沌
Eyecatch

春はすぐそこ [4/5]

 とわを愛しているのに殺せなかったのは何故なのか。その答えはりおんが教えてくれた。
 りおんは麒麟丸を刺せなかった。りおんは麒麟丸をまだ愛していた。
 本当に愛する人は殺せやしない。でも、それを悟るのが遅すぎた。
 とわの首を絞めた感覚は今も思い出せる。彼女のことが愛しくて、希林に殺されるのを黙って見ていられなくて。どうせ失うならいっそこの手で。
 それでも指の力を緩められたのは、思い出したからだった。春までに破滅するのはおいらの方だと。おいらの命を差し出せば良いのだと。元よりりおんに捧げた身だ。
 愛の姿を理解した時、体の痛みも感じられなくなった。とわに愛の言葉を伝える時には、もう彼女の顔も見えなくなっていた。
 ちゃんと伝わっただろうか。まあ良い、いずれにせよおいらはここで終わりだ。もう眠ろう。とわと過ごした季節の記憶と共に。

 返事も聞かないで逝っちゃうなんて酷い人だ。いいや、酷いのは私だ。私がもっと強かったなら、理玖は死ななくて済んだかもしれない。
 愛とか恋とかよく解らなかった。理玖への気持ちが恋なのかも自信が無かった。誰かを好きになるのは初めてだったし、かっこいい若い先生やアイドルが気になるのとどう違うのか、答えられなかったから。
 でも今ならはっきり言える。私は理玖に恋をしていた。理玖の指が私に触れる度に心臓が高鳴った。抱き締められる度に鼻をくすぐる匂いにずっと包まれていたかった。もっと沢山話して、もっと色々あなたのことを聞きたかった。
「初恋の人とは結ばれないって本当なんだね……」
 私は理玖のお墓に新しい花を供える。
「……これからは来る頻度、ちょっと減らすね」
 毎日ここまで来ようと思うと、まともに仕事や家事ができない。今はみんなも私を気遣って許してくれているけど、いつまでもそれに甘えていられない。
 私を無条件で守ってくれる人はもう居ないんだから。此処で泣いてたって、戻ってくるはずもないんだから。
 涙を拭いて立ち上がる。眼の前に広がる海に、秋に交わした会話を思い出した。
『咲いたら一緒にお花見しようよ』
『おいら、先の事は約束しないようにしてるんです』
「あの時は私のことフッたじゃん」
 理玖はこうなる事を勘付いていたのだろうか。二人の間に縁が無いことを。
「言い逃げなんてホント、酷いよ……」

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