宇宙混沌
Eyecatch

妖幻の花 [1/3]

「よくぞご無事で……と言いたいところだが」
 理玖は雑巾みたいにぼろぼろになった俺達を見て苦笑した。
「こりゃあ、今日もこの町に一泊ですかね」
「すまないな。行程を遅らせてしまって」
 せつなが謝る。理玖は手を振った。
「いやいや。竹千代のお蔭で予定より随分早く進んでるんでさあ。今日はゆっくり休んでくださいや。宿の部屋、姐さん方のもお取りしましょう」
「金かかるじゃん。アタシは野宿でいーよ」
 もろはが断る。理玖は引き下がらない。
「今日の宿代くらい、あっしが出しますよ。護衛を頼んでる身で言うのも何ですが、姫様達だけで野宿させるのは流石に」
「そこもとが居るより余程安全だと思うが……」
 せつなが呟き、理玖と睨み合う。
「……とにかく、部屋取ってきますよ。一部屋に二人までしか泊まれねえから、追加で三部屋ですね」
「竹千代は小さいんだし、誰かの布団に入れば良いんじゃ?」
 もろはが提案する。俺は赤い髪飾りの女を見上げた。
「お前それ本気で言ってるんだぞ?」
「アタシの布団に入れてやるよ」
「流石にまずいと思うんだぞ……」
 しかし、宿屋に問い合わせた理玖の返答は芳しくない。
「二部屋しか空いてなかった。竹千代はあっしらの部屋に来るかい? お嬢もお前のこと気に入ってるし」
「うーん、一晩中食われる心配をしてたら眠れないんだぞ……」
 そう答える間も、俺の耳はりおんに舐め回されている。
「それもそうか」
「じゃ、アタシと一緒で良いだろ」
「へーい」
 渋々了承した俺に、理玖は片目を閉じて目配せする。
「ま、食われる心配をするのが竹千代じゃなくなるってだけかもな」
「?」
「…………」
 もろはは首を傾げている。理玖め、解ってるならりおんもろはと一緒にして、俺を理玖と一緒にするとか融通利かせてほしいんだぞ。
「異論無ければそういうことで」
 理玖が踵を返す。とわが血で真っ赤の上着を摘んで言った。
「宿に入ったら、まずは着替えとちゃんとした手当だね」
「汚れた服は、洗った後アタシのとこに持ってこいよ。繕ってやるから」
「ほんと? 助かる」
「ほらお嬢。良い加減竹千代を放してやりな」
 俺は振り返った理玖に抱き上げられ、もろはに向かって投げられる。理玖も大概俺の扱いが雑なんだぞ……。
「ま、仲良くやれよ」
 意味深な言い方で宿に入って行く。その背をせつなが追いかけた。「そこもとはとわに手を出すな」って、先に釘でも刺すのかな。

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