理玖様と二人きり、しかもこれから怪しげな船に潜入とか気まずさと緊張で死にそうなんだぞ~!
「り、理玖様は眠くないんですか?」
「別に? なんで?」
「何でもございません」
もろはとの関係は秘密なのか? まあ、とわの気持ちを考えたらそうなるか……。
「そういう竹千代こそ今日はどうしたんだよ。眠れなかったのか?」
「まあ……」
「近付いたら気を抜くなよ。何が出てくるかわからねえからな」
「承知なんだぞ」
気付かれないよう気を付けつつ、船の真上付近まで来た。理玖様が瞬間移動して船に飛び移る。俺は素早く変化を解いて、理玖様に受け止めてもらった。
理玖様は、ここからは周囲の形状把握と短距離瞬間移動を繰り返して船倉へと向かう。俺は都度虫などに変化して、隙間を通ってそれを追いかける。
「これは……」
理玖様は荷の積まれた部屋を見つける。一つ開けてみて、驚愕の声を漏らした。
「すごいな……」
「……理玖様!」
荷に気を取られていた理玖様に、人の気配を伝える。だが一歩遅かった。
「Quem é você!?」
銃を持った人間達が駆け付ける。
「Não posso dizer」
理玖様が俺の知らない言葉で言い返し、剣を出す。相手に投げつけて退路を確保しようとした。しかし相手はそれを躱しつつ、銃口を上げる。
「Idiota! Não atire!!」
間髪入れずに二つ大きな音が鳴ったと思ったら、気付けば海に落ちていた。
冷たい。苦しい。理玖様は?
「理玖様ー!!」
水面に上がって叫んだが、船がなおも爆音を上げながら沈もうとしていた。俺は巻き込まれないよう、慌てて空に飛び上がった。