地獄の先は天国 [4/5]
「それでさー竹千代が――」
「もろは! それは秘密だって言ってるんだぞ~」
「へえ~。二人だけの秘密?」
私が含み笑いをすると、二人は頬を染めた。
「へ、変な意味じゃねえぞ!」
「そうだぞ!」
「怪し~」
「ほらほら、お前らいつまでくっちゃべってるんだ」
盛り上がっていたところ、手を叩きながら入ってきた理玖に解散させられる。
「せつなを見習って早く寝ろ」
「んだよ、せつなは朔でコロッといっちまっただけだろ!」
文句を言いつつも、もろは達は寝所へ。
「もうそんな時間かあ」
「星を見て確かめれば?」
言われて、船の窓から外を覗く。確かに深夜。
「それでは、おやすみなさい」
「理玖」
去り行く背を呼び留める。この機会を逃すと、また暫く進めない気がしたから。
理玖が振り返ると、これから言おうとしていることに心臓が押し潰されそうになった。
「あのさ、前にした約束、まだ覚えてる?」
あれから理玖は、私に淫らなことをしないという約束を守ってくれた。だから私も果たさなきゃ。
ううん。それがなくても、最初からそのつもりだった。
「どれでしょうか?」
「悩むほどした覚えないんだけど……」
「冗談です。覚えてますよ」
理玖の指が私の黒髪を撫でる。
「おいら、合ってましたかね?」
「うん」
「とわ様はおいらだけ見てくれるんです?」
「うん」
理玖はそのまま私の顔を上に向かせる。腰に手が回って、口付けられた。
「もっと早くするのかなと思ってた」
「朔の日を待ってたんですよ。せつなに音や匂いでバレたら、大事になるの間違いありませんから」
「確かに……」
「それに」
理玖が体を密着させた。下腹部に何か硬い物が当たる。
「今度は妊むかもしれやせん。前とは状況が違いますから、とわ様がお嫌なら反故にしましょう」
「いやだよ」
言葉選びをミスった。体を離そうとした理玖の背中に腕を回し、慌てて言葉を足す。
「私も理玖としたかったんだよ。無かったことにはしないでよ」
「とわ様……」
「子供ができたら、その子の事も愛するって誓って」
「……誓います」
理玖が再び私を抱き締めて、それからひょいと抱え上げた。
「え? ちょっと」
「したいようにして良いって言いましたよね?」
言ったけど、此処から!? 反論できずに口をぱくぱくさせている間に、私は理玖の寝所に連れ込まれていた。
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