地獄の先は天国 [2/5]
ねえ待って。何これ。もしかして私、襲われてる?
理玖の指がシャツの下を弄って漸く理解した。理玖に襲われている。
「やっ、やだ! ちょっとまだ」
心の準備が。ん? それって、準備出来たら良いってこと?
「お嫌ですかい?」
理玖は意外にもすんなりと手を止めた。眉尻を下げた表情に、此方が悪い事をした気分になる。
「……嫌、じゃない、んだけど……」
「けど?」
嫌じゃない。相手が理玖なら。私の「好き」ってそういうのだっけ? と疑問に思いつつも、体は勝手に疼いている。
「初めてだから、優しくして……」
その答え方が何を意味するのか知らないわけじゃない。けど、もう口を衝いて出てしまった。
「……そりゃあ、いくらとわ様のお願いでも聞けやせん」
理玖の顔が再び近付いた。形の良い目が妖しく笑う。
「だっておいら、とわ様を滅茶苦茶にしたくて呼んだんですから」
それから理玖は私の肌を撫でて、胸を掴んで、口の中を舌で隅から隅まで弄った。上の服はいつの間にか脱がされていて、夜風が私を震えさせると、覆うように抱き締めてくれる。
「……ねえ」
理玖の指が私の首を撫でた時、堪えきれずに尋ねる。
「下は、触ってくれないの?」
さっきから上半身ばかりで焦らされているみたい。もう下着の中はびちゃびちゃなのに。
「下?」
「あ、ベルト外せないとか?」
私が自分でベルトを抜くと、理玖は首を傾げつつも下着ごとズボンを脱がす。
「あ、あんまり見ないで。恥ずかしい……」
「濡れてる」
「だって理玖が気持ち良くするからっ」
「気持ち良い?」
理玖は終いには顎に手を当てて考え始めた。
「ど、どうしたの? セックスの仕方知らないの?」
私でも知ってるのに!?
「へえ、これがsexなんですね。まあおいらにはありませんからね」
「どういうこと?」
「自分でお確かめくださいや」
理玖は言うと、私に馬乗りになった。手を引っ張られて急かされる。恐る恐る理玖の股間に手を伸ばして、触れた。そこには何も無い。
「ええっ!? 嘘でしょ!?」
「おいら、生き物としては紛い物ですから」
「そ、そう言ってたけど……。じゃあどうしてこんなこと……」
「とわ様」
理玖は私の手を掴み、地面に縛り付ける。
「言ったでしょう? とわ様を滅茶苦茶にしたいんです」
「滅茶苦茶って、具体的には?」
「そうですねえ」
ぺろり、と理玖の舌が私の唇を舐めた。そのまま受け入れて、舌が絡んでいる間、甘い快感に耐える。
「……こうして、泣かせて」
理玖は口を離すと、私の目尻に滲んだ涙に触れた。
「おいらの好きなようにして……」
理玖の紡ぐ言葉が勢いを失くす。
「おいらを……おいらだけを見てほしいんです」
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