宇宙混沌
Eyecatch

第4章:井戸に落とした [3/3]

「どう? 親父」
「やっぱり井戸に落ちたんじゃねえか?」
 私はもろはとその父、犬夜叉にも念の為匂いを追ってもらっていた。しかし、辿り着くのは結局同じ場所。
「今になって井戸がまた動くなんて……」
 かごめ様も表情を暗くする。励ましのつもりか、叔父上が言った。
「匂いは雨で結構流れちまってるし、半妖の俺達じゃ追いきれねえ。殺生丸の野郎を待とうぜ」
 私としては、井戸に落ちた以外の可能性の方が色々と心配だが。
「あ、来た!」
 空を見ていた母上が言い、手を振る。邪見と共に父上が舞い降りた。母上が呼び出した事情を説明する。
 話を聞き終わると、長い髪に土が着くのも構わず、父上は地面に顔を近付けて匂いを嗅ぐ。
「うわ~殺生丸様本気」
 邪見が呟く。言葉にはしないが、心配なのだろう。
「……此処にとわが手を突いていた」
 暫くして父上は立ち上がる。井戸の縁を指差した。
「理玖が立っていたのはそこだ」
 今度は井戸の向こう側を。とわと理玖が居たのは、お互い手が届かない位置らしい。
「理玖の匂いはそこで途切れているが、井戸の中からも微かにする」
「えーつまり、手を滑らせて井戸の中に落ちたとわを庇うため、理玖が瞬間移動で先回りしたということでしょうか?」
「おそらくは」
 推理を褒められ、邪見が目を輝かせる。
「その後井戸の向こうに飛んだのか、妖術で別の場所に行ったのかは判らぬ」
「後者は無いでしょう。理玖は、別の生き物は瞬間移動では連れて行けないと言っていました」
 私が言うと、金の瞳が射抜いてくる。
「前にそれで、竹千代を冬の海に放り落とした事があるんだ。理玖も逃げ損ねて大怪我してさ。嘘じゃねえよ」
 もろはも証言する。父上は問うた。
生き物でなければ連れて行けるのか?」
「……わかりません」
「お義兄さん、まさかそれって……」
「死臭や血の臭いはしない」
 それを聞いて私達はほっと胸を撫で下ろす。叔父上がやれやれといった風に井戸の縁に乗った。
「こんな大騒ぎすることねえだろ。あいつらも子供[ガキ]じゃねえんだし。それに、あっちの世界は戦国[ここ]より平和で豊かで、過ごしやすいぜ?」
 まずい。母上がその言葉にどんどん顔を下げていく。それを見た父上がどんどん不機嫌になっている。
「今頃、?」
「おすわり!」
 続きを言いかけた叔父上が、言葉を止めて井戸の中を覗いたのと、かごめ様が呪文を唱えたのは同時だった。当然、叔父上は井戸の中に落ちる。
「家族が行方不明になって心配するのは当たり前でしょ! ちょっとはりんちゃんの気持ちも……って、あれ?」
 井戸の中を覗き込んだかごめ様が、驚愕の表情を浮かべる。父上はそれを見て、邪見を引っ掴むと井戸の中に放り込んだ。
「殺生丸様~!?」
 べしょっ、と井戸の底に邪見がぶつかる音がした。
「もう閉じたか」
 父上は無表情のまま呟く。覗き込んでみると、いつか嗅いだ匂いが鼻をくすぐった。
「殺生丸様! 犬夜叉の奴、居りませんぞ! ただ手紙が落ちておりました!」
 這い上がってきた邪見から手紙を受け取る。それは、令和に居るとわからの物だった。

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