宇宙混沌
Eyecatch

第1章:井戸に落ちた [1/2]

 井戸に落ちた。
[]って……」
「大丈夫理玖!?」
 例の如く、時代樹と骨喰いの井戸の見回りをしていた。小雨が降っていたので、とわ様の末妹は留守番で、おいらだけで行くつもりが、とわ様も一緒についてきた。
 とわ様が井戸の縁に手を置いて身を乗り出し、底に向かって誰か居るかを問うた。何か聴こえる、と言った矢先、とわ様が手を滑らせたのだった。
「おいらの事は構いやせん。それよりお腹や腰を打ってませんか!?」
「理玖が下敷きになってくれたから平気」
 咄嗟にとわ様より下に瞬間移動した甲斐がある。問題は、どうやって此処からとわ様を出すかだ。瞬間移動では他の生き物を連れて行く事は出来ない。
「おいらが一旦屋敷に戻ります。縄梯子か何かを調達してきましょう」
 そう言って空を見上げ、言葉を失った。頭上に見えるのは雲ではない。天井だ。
「どうしたの……」
 とわ様も上を見上げ、理解する。
「!! 此処、令和だ!」
「とわ様が子供時代を過ごしたという?」
「うん。大ママ……こっちの世界のおばあちゃんか、曾じいちゃんが近くに居るはず。あの人達こういうの慣れてるから、事情を話せば解ってもらえると思う」
「わかりやした。少々お待ちくださいね」
 瞬間移動で井戸の上に出る。その時、井戸を囲っている小屋の戸が開いた。
「誰か居るのか?」
 後光の中に見えたのは中肉中背の男だった。おいらを見て驚いた顔は、どこかもろはに似ている。
 おいらはこの人物を見たことがある、と思った。
「『日暮さんのお父さん』」
「え?」
「その声! 草太パパ!?」
「とわ!?」
 草太はおいらの隣を通り過ぎ、井戸の中を覗く。
「とわ! 帰って来たのか」
「いや、完全に事故なんだけど。梯子取ってきてくれない?」
 草太は何処かへすっ飛んでいき、またすぐに梯子を持って現れた。
「おいら一旦下に下りますね」
「君は……」
 声をかけて漸く、草太はおいらに意識を戻す。
「あ、紹介するね。その『おいら』っていう人、私の旦那さん」
「理玖と申します」
 言って耳飾りを弾き、とわ様の隣へ移動する。登っている途中で落ちたら事だ。
「えええええええええ!?」
 頭上では草太の叫び声が響く。
「いきなり瞬間移動は流石のパパも驚くか」
「いや、そっちに驚いたんじゃないんじゃないですかね」

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