「阿久留が復活しただと?」
父上に言付かった邪見が屋敷に現れた。話によれば、井戸を依代として阿久留が時空を超えさせているのだろうと。
「しかし、何故超えたり超えなかったりするのだ? 阿久留に選ばれていないという事か?」
「そうかもしれん」
「でも、それならあっちに行った三人はすぐに戻ってこられるんじゃない?」
母上が首を傾げる。
「確かに……」
人を選んでいるわけではないということか。
「何か、阿久留の力を引き出す為のきっかけが必要なのかもしれん」
「きっかけ……」
考えていてもわからない。私は井戸まで行って、飛び降りてみた。何も起きない。
だがこれで一歩前進だ。阿久留の力なら、きっととわ達は此方に帰ってこれる。
「……帰ってくる気が、あるのならな」
井戸の外に出る。風が吹き、何処かからからからという音がした。
「阿久留か!?」
周囲を見渡すも、見当たらない。一瞬視界に、何か派手な色がちらついた。慌てて振り向くも、結局その姿を捉えることは叶わなかった。