宇宙混沌
Eyecatch

第1章:二人の里帰り(前編) [6/6]

「ただいま~!」
「もろは! おかえり! ……そっちの男の子は?」
「ご無沙汰していますなんだぞ」
「竹千代君!?」
 かごめ様は驚いて、手に持っていた籠を取り落とした。三人で転がった中身を拾っていると、犬夜叉様も帰ってくる。
「ようもろは。元気だったか?」
「うん!」
「竹千代は随分立派になったじゃねえか」
「どうもなんだぞ」
 流石に匂いで判ったか。小さな家に入って、茶を戴く。
「竹千代君ってもろはよりも歳上だったのね。てっきりまだ子供なんだと思ってた」
「事情があって、歳を誤魔化していたんだぞ」
狸平[まみだいら]のお家騒動か。弥勒から聞いたぜ。俺達が満月狸の退治に行った時は、確か世継ぎは二つだったって……」
「そうだぞ。十九になりました」
「もうそんなに前になるのね。もろはがお腹にも居なかった頃だから当たり前か。それにしても、随分と綺麗なお顔で」
「だよな。アタシも初めて見た時びっくりしたぜ」
「何言ってんだよ。前から目鼻立ちはっきりしてただろ」
「親父は狸の美醜わかるの!?」
「犬と狸は顔の形が似てるからな」
「あの、褒めても何も出ませんだぞ……」
 ただの帰省だと思っていたから、土産らしい土産も持っていない。この状況で嫁に貰う話を切り出すのは非常にやりづらいんだぞ。
「それでさ、竹千代と結婚しようと思うんだけど」
「あら、良いじゃない。おめでとう」
もろはの事よろしく頼むぜ」
「は、はいだぞ……」
 悩んでいるうちにもろはが言い、一瞬で終わった。呆気なさ過ぎて反応に困っている間に、話は進む。
「祝言は狸平で挙げるのか? それとも理玖の船?」
「いや、此処で挙げて帰ろうかな。良いよな?」
「俺は構わないんだぞ。でも、狸平でやるような仰々しいのは出来ないんだぞ……」
「わかってるよ。なんかこう、適当な感じで」
「さてはお前、祝言の手順知らないんだぞ」
「寧ろ知ってるわけねーだろ! 殿様とかしか挙げねえやつなんだから!」
「えっ、そうなのか?」
 かごめ様が噴き出した。犬夜叉様はやれやれと頭を掻く。
「歳を考えれば別に早くはねえけどよ……お前等が本当に夫婦をやれるのか先が思いやられるぜ」
「が、頑張りますだぞ……」
 やれるやれないではなく、もう契りは済ませてるんだぞ。一度でも抱いた女を簡単に捨てるほど俺は軽くも甲斐性無しでもないんだぞ。……とは言えないので無難に返しておいた。
「お酒を酌み交わすくらいはしましょうか。竹千代君がワイン持ってきてくれたし」
「竹千代は葡萄酒飲むとひっくり返るぜ」
「俺が飲むなら普通に米の酒を持ってくれば良かったんだぞ……」
「なんでそんなに段取り悪いんだよ。お前等らしくないな」
 ギクリ。思わず顔を固めた俺達に、二人は少し訝しむ表情を見せる。
「いや、その……旅の途中で求婚したからなんだぞ」
 嘘ではない。いや、俺が求婚された側だっけ? とにかく、それ以上の追及はされなかった。
「まあ、無理して挙げなくても良いんじゃない? 挙げたいのでなければ」
「じゃあ別に良いや。……なんつーか、全然反対とかしねえのな」
「俺達が言えた立場じゃねえからな……」
「あたしなんて時代超えて結婚しちゃってるのよね……」
「何なら俺達より竹千代の方がもろはと付き合い長いし」
「今更都合よく親の権利振りかざすのもね。だからもろはが選んだ人なら、余程の事がない限り、快く送り出してあげようって決めてたのよ」
「そっか……」
 もろははどこか寂しそうに呟く。俺もなんとなく納得がいかない。
「俺も訊いても良いかだぞ?」
「なあに?」
「その『余程の』相手って、例えば?」
「例えば……殺生丸だったら殺す」
「それは此処に来る前に別の場所で修羅場なんだぞ……」
「まあ、俺達はお前のこと好きだからさ。生まれとか関係無くな」
「黒真珠の中でもろはの様子を見てたけど、時々竹千代君も見えたのよ」
「喧嘩しかしてなかったんだぞ」
「そうね。でも最後はいつも、もろはを乗せて何処かに送り届けてくれてたでしょう?」
「そうだったかな」
 もろはが惚けた。
「まあなんだ。竹千代のところも、一歩間違えれば俺達兄弟みたいになってたかもしれないしな」
「そうね。お義兄さんのことを悪く言うつもりじゃないけど、竹千代君が弟さんのことを恨んだり妬んだりせずに、悪い人から助けてあげたのはとても立派だと思う」
 その言葉にほっとする。投げやりだったのではなく、ちゃんと認められていた。
「大事な一人娘、俺を信じて託してくれること、ありがたく思いますだぞ」
「そんなに畏まらなくてもくれてやるって」
「もろはったら。真っ赤になっちゃって」
「だ、だって!」
 隣を見ると、確かに頬を染めていた。
「俺何か変な事言ったか?」
「言ってない!」
「……俺達は晩飯の調達でもするか」
「そうね。りんちゃん達も誘おうかしら」
「なら殺生丸の屋敷の方が良くねえか? 入らねえだろ」
「じゃあ準備できたら呼びに来るわね」
 わざとらしく犬夜叉様達が出て行く。俺は緊張が解けて、息を吐いた。
「竹千代」
「なんだぞ?」
「お前の家にも行こう」
「俺の家は理玖様の船なんだぞ。屍屋のことか?」
 そっちは元々、帰りに寄る予定だ。もろはは首を横に振る。
「狸穴島に。アタシも菊之助に挨拶したいし、お前もちゃんと、祝ってもらえよ」

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