みんなへ
私と理玖は令和で無事です。
井戸が閉じちゃって、また次いつ動くかわからないから、この手紙を入れておくね。
なるべく早く帰れるようにがんばります。
とわ
船の者に伊予まで帰って良しと託けを。今は駿河で待たせている。
報酬は後で言い値で払う。
理玖
かごめ様が手紙を読み上げた。母上はほっとしたように肩の力を抜く。
「良かった、元気そうで」
「この分じゃ犬夜叉もあたしの実家ね」
「心配して損した~。んじゃアタシは、竹千代誘って駿河まで行こうっと」
「言い値の報酬が目当てか」
「もっちろん!」
呑気なものだ。それも理玖が此方に帰って来なければ受け取れないだろうに。
「竹千代くんに無理させないのよ。それにしても、理玖さん字が綺麗ね」
「それみんな言うね! りんにはよくわからないけど、字が綺麗な人って心も綺麗なんでしょ?」
「そうね。そう言われる事もあるわね」
かごめ様は手紙を畳むと、すっかり元気になった母上に渡す。
「これからどうされます?」
父上に尋ねる。返事の代わりに、邪見に「行くぞ」と言って、父上は飛び上がった。
「お袋も向こうに行ければ良かったのにな」
もろはが、父が消えた井戸の底を覗き込みながら呟く。
「お袋も大ママに会いたいだろ?」
「……どうかな」
「え?」
「会いたいけど、会ったらもう戦国時代に戻って来れない気がするの」
「お袋……」
「…………」
私はかごめ様から目を逸らした。
とわの手紙を疑うつもりはない。だけど、きっと向こうで草太達に会っている筈だ。理玖も一緒に飛ばされた上、理玖にはこの時代にも縁者は居ない。とわには、此方に帰ってくる動機があるのだろうか?