「――って理玖さんが言ってたの! 殺生丸様~お顔の痣消せない?」
理玖め、余計な入れ知恵を。久々に屋敷に帰ってきたら、りんが殺生丸様に無茶振りをしてきて、わしは溜め息を吐く。
「これりん! 子供じゃあるまいし、駄々を捏ねて殺生丸様を困らせるでない!」
「は~い」
ふー危ない危ない。実はそこまで殺生丸様が器用に変化できないことがバレるところだった。
「他は変わりないか?」
「うん! あ、でもね、見せたいものがあるの」
りんは奥の部屋にすっ飛んで行き、すぐにまた舞い戻ってくる。
「どう? 理玖さんが字を教えてくれたの!」
りんが広げた紙には、左側に整った文字が、そのすぐ右に明らかに筆を握り慣れない字が書かれていた。「りん」と書かれている。
「こっちは――」
「私の名だ」
「そう! 『殺生丸』様! これが『邪見』様で――」
どうやら家族分あるらしい。たまには理玖も粋なことをするではないか。
殺生丸様も喜んでいる――のは伝わってくるが、それよりも、わしも驚いたことが一つ。
「理玖めちゃくちゃ字が綺麗じゃな」
呟くと、殺生丸様は黙って頷いた。