宇宙混沌
Eyecatch

りんは興味津々 [3/4]

「ご飯ですよ~」
 奥方の呼ぶ声にとわ様と部屋を出る。おいらは奥方の作った料理は戴かないことにしているが、殺生丸が居なくなってからはとわ様の末妹に食事を与える係になっている。その食事っておいらの血なんだけど。
「毎日ごめんね。無理しなくて良いからね」
「別に無理はしてませんよ」
 それに、飲んだ後は少しの間だけくろのも人に姿になれる。日に日に継続時間も長くなってきた。
「おいらが船に戻るまでに、ずっとこの姿で居られるようになってくれれば良いんですけどね」
 おいらは人の姿になった姫君に服を着せる。不思議なことに、くろのに舐められた傷は止血しなくても勝手に塞がっていた。
「その時には殺生丸様か邪見様が、もっと頻繁に帰ってきてくれると思うから」
 奥方が気遣ってくれた。とわ様は自分の分を食べ終わると、おいらからくろのを受け取る。
「今夜はせつなも居るし、理玖も今日はご飯食べに行くでしょ?」
「ええ、もう少し更けたら」
 その前に着替えなければ。いつもの服は直したが、なんだかんだ小袖の方が着慣れていて、出掛けない時は着流していた。
「それにしても、くろのは吸血鬼みたいだねえ」
「吸血鬼?」
 せつなも食事を片付け、話に加わる。
「西洋の妖怪みたいな?」
「へぇ~」
「えっ、なんで理玖がそう言うの? ヴァンパイア知らない?」
「それは何語でしょうか?」
「英語だよ。イングリッシュ」
「……綴りを書いてもらえれば、わかるかもしれやせん」
「書けるかな……」
 とわ様は不安そうにしたが、一先ず先程の筆一式を取りに部屋へ。皆の元に戻ると、女性陣は何やら円陣を組んでいた。くろのせつなの膝の上に移動している。
「何が始まるんです?」
「理玖の文化講座」
「おいらヴァンパイアの綴りが知りたいだけなんですが」
 とわ様に筆を渡し、おいらはその向かいに座る。とわ様はうんうんと唸りながら、一文字ずつアルファベットを記していく。
『vampire』
 書き終わり、とわ様がこちらに向けた紙を覗き込む。
「やはり知りませんね」
「そっか。実は結構新しい単語なのかな?」
「そうかもしれやせん」
 言って姿勢を正したとき、緩んだ懐から細長い物が落ちた。
「はい。これなあに?」
 奥方が拾って渡してくれる。
「どうも。煙管と言いまして、最近この国に入ってきたばかりの物なんですよ」
「ちょっと理玖煙草吸ってるの!?」
 とわ様が身を乗り出してきて、おいらは懐に煙管を戻そうとしていた腕を掴まれた。そのまま没収される。
「とわ様? 一体……」
「煙草は百害あって一利なしだよ! 寿命縮めたくなかったら今すぐ禁煙して」
「とわ様がそうお望みなら吸いやせんよ」
「マジで吸ったら離婚だからね離婚」
 こ、怖い。よくわからないが、とわ様がそんなに嫌がるなら選択肢は一つだ。
「他に何持ってるの!?」
「おい、此処で脱がすな」
「理玖さん面白い物沢山持ってそう」
 まともなのはせつなだけかよ! 流石に脱がされはしなかったが、とわ様に袖の中や懐の中にまで手を入れられて確認された。
「煙草以外だと扇子に、財布に、懐紙……意外と普通だな」
「絹扇子とか洒落ててムカつく」
「とわ様、一体何を期待してたんですか? せつなはもっぺん言ってみろ」
「絹扇子とか洒落ててムカつく~」
せつなと理玖さんって本当に仲良しだね」
「「どこが!?」」
「とわが妬いちゃうんじゃない?」
「仲悪いよりは良いよね」
 嫁の人格が出来すぎていて、喧嘩を続ける気が失せた。同様の表情をしたせつなに問う。
「次帰ってくる時の土産は絹扇子か? 何色が良い?」
「薄緑。あと葡萄の酒」
「へいへい」
 奥方が突然、くすくすと笑いだした。
「良かったね、とわ」
「うん!」
 とわ様も満面の笑顔だ。おいら達は首を傾げる。
「いつでも帰ってきてね。とわも、理玖さんも」

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