「ええっ。じゃあもろはから言い出したの?」
「そうだよ~。全部アタシが悪かったって」
やめてくれて本当に良かった。自分から言い出した手前、怖くても突き飛ばせなかったから。
「それにしても、お前にそんな知恵を中途半端に吹き込んだのは誰なんだ」
「誰だったかなあ。退治屋の男連中と話してたらなんか言われたんだけど……」
「……後で琥珀に報告しておく」
雲母の上で、せつなが拳を握りしめた。
「でも良かった。未遂で済んで」
「いやー、旦那には悪い事したな……色んな意味で……」
アタシの無知や未熟さに怒らなかった上、駄賃までくれたのは器が広いとしか言いようがない。中身を知らなかったとはいえ、ホイホイ女を買うような奴だと決めつけてしまった。実際手つきは慣れてたけど。
「何を言う。そのまま犯されるよりはよっぽどマシだろう」
「どうしてやめちゃったのかな?」
胸の小ささで萎えさせたことを自分で言うのは癪に障って、誤魔化す。
「アタシは顔が好みじゃないんだと。あ、そうだ、とわやせつなくらいの美貌はほしいって言ってたな」
「褒められているのだろうが、全く嬉しくないな」
「……そうだね」
真ん中に座ったとわが同意するまでに妙な間があった。先頭のせつなが振り返り、アタシも体を傾けてとわの顔を覗き込む。
「とわ、まさか喜んでいるのか?」
「まあ一応褒め言葉だけどさ。相手は選んだ方が良いと思うぜ?」
「解ってるよ! 美人だって言われること滅多にないから驚いただけ!」
「ふ~ん?」
照れてる照れてる。面白がったアタシとは対照的に、せつなは三白眼でとわに釘を刺した。
「よりにもよって、あの得体の知れない奴に絆される様なことはないようにしてくれ」