宇宙混沌
Eyecatch

その愛は海の様に


「お酒はまだ駄目だよ」
「何故?」
「私が居た世界では、子供はお酒を飲んじゃ駄目だったんだ。まだあと五年は待たなきゃ」
「五年なんてアタシらの寿命からしたら誤差誤差~。折角なんだし、ありがたく戴こうぜ!」
「そうだぞ!」
 危うく、酒を飲むこと自体断られそうになったが、もろは達に押されて、最終的にはとわも器を持った。
[しぶ]~~」
「なんだこれ、本当に葡萄からできてんのか?」
「俺、急に眠……」
 椅子から落ちそうになった竹千代をもろはが受け止める。そのまま椅子に寝かせてやった。
「……不思議な味だな……」
 私も一口舐めて、理解する。
「これが大人の味ってやつか~」
「南蛮の奴らはこれを好んで飲むのか? どんな舌してやがんだ」
 とわ達が器の半分も飲まない内に、私はお代わりを注ぐ。
「せつな、ペース考えないと。せつなもお酒飲み慣れてないんだから」
「ぺえす?」
「うーんと、えーっと、飲む速度」
「わかった」
 渋々器を置く。理玖に頼まれた事も聞かねばな、と思ったが、先にとわが口を開いた。
「せつな最近、よく理玖の部屋に行くよね」
「ん……まあ、そうだな……」
 とわの前では指摘しにくい小言が山ほどあるからな。
「二人で何話してるの?」
「別に……」
 とわに聞かせられないから二人で話しているのだ。しかし咄嗟に上手く誤魔化せず、私の態度にとわが眉を下げた。その様子を見て、もろははにやにやしている。
「安心しろ、やましい事は何も無い」
 先手を打って否定しておいた。もろはが茶化す。
「本当に~?」
「本当だ」
「この前だって『お手付き』の話があったばっかなのに」
「その話はもう良いだろう。理玖がわざと誤解を生んだだけだ」
「理玖からしてみれば、私だけじゃないんだろうね」
 突然とわがそう言うと、器に残っていた酒を一気に呷った。
「おい、『ぺえす』はどうした?」
「もう一杯」
 無視か。もろはは流石に困り顔で、少しだけとわの器に酒を入れる。
「この時代では一夫多妻も珍しくないじゃん? 理玖だって面倒見れるなら何人でも奥さん欲しいのかも」
 とわの溢した言葉を、もろはがすかさず否定する。
「いや理玖に限ってそんなことは無いだろ」
「あるかもしれないよ! せつなは私と顔一緒だし。寧ろ私より可愛いし」
「何度でも言うが、私と理玖は絶っっっ対にそういう仲ではないからな」
 勘違いするな、と凄むと、とわはやっと黙る。
「そりゃそうだよ~。第一、女が欲しけりゃ幾らでも買えるだろ。ましてやあの顔だぜ? 買うまでもなく後腐れ無い相手なんていっくらでも――」
「もろは!」
「あっ、[わり]ぃ……」
 とわはどんどん萎れていく。溜息をつかないように気を付けるので精一杯だった。
「……私がまだ返事してないのが悪いのかなあ……」
「返事?」
「理玖さ、死ぬ前に、私のこと『愛してる』って言ってくれたんだ」
 もろはが頬を染めて目を見開く。そうだ、私も驚いた振りをしなければ。
「理玖の野郎、結構自分の気持ちに素直だよな」
「それで、とわはどうなんだ?」
「……いや……その……」
 急にとわも頬を染め、もじもじとしだす。
「せつな~。そりゃあ理玖より先にアタシ達が聞くのは野暮ってもんだぜ」
「そう言われればそうか。顔真っ赤だぞ」
「あはは。ちょっと飲みすぎちゃったかな……」
「は~。お前らさっさとやることやっちまえよ」
 もろはが机に突っ伏して、そんなことを呟く。
「それは私が許さんぞ」
 酔いが回ってきたのは、三人とも同じか。まあ良い。嫉妬をする程度には、とわも恋を知ったようだと、理玖には伝えられるだろう。

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