宇宙混沌
Eyecatch

その愛は海の様に


「理玖、とわにはいつもの様付けで頼む」
「とわに頼まれてやってるんですぜ?」
「お前と話している時のとわが完全に女の顔をしているから駄目だ! あとお前にとわを呼び捨てにされると腹が立つ」
「本音が出てやすが」
 理玖は天守の椅子に横向きに寝ていたが、肘掛けから脚を下ろして座り直す。読みかけの本を脇の台に置いた。
「いや、おいらもそろそろやめようと思ってた。話しかける度にあんな表情で煽られたら堪らん」
「手を出したら容赦しないぞ!」
「はいはいわかってやすよ」
 本当か? 訝しむ視線で刺してみたが、緑の目は切なく笑った。
「おいら、答えを聞いてねえんです」
「何の?」
「とわ様に『愛しています』と言った後の」
「……いつの間にそんなことを」
「一度死ぬ間際に。要は言い逃げです」
 なるほど、復活してからとわに会いに来るまで時間がかかったのは、これを恥ずかしがっていたからか。
「愛とか恋とかよくわからなかったんじゃないのか」
「おいらは解った気がする。とわ様がまだなら、それはそれで良いんですけどね」
 とわが理解するまでは待つつもりか。その言葉は信用しても良さそうだな。
「せつなも一つ頼まれてくれ」
 理玖は言うと、椅子の後ろから箱を引きずり出した。
「何だそれは」
「前の仕事でちょっと色付けてもらったんだが、山分けするには少なくて隠してたんだ。おいらから助っ人達へのプレゼントってことで、とわ様に飲ませて話を聞いてくれねえか?」
「ぷれぜんと?」
「贈り物。あんたらの働きから考えれば、他の奴等も文句言えねえよ」
 追加報酬か。理玖は細長い玻璃の瓶を取り出し、私に持たせた。知らない言葉の書かれた札がついている。
「中身は何なんだ」
「葡萄からできた酒だ」
「お前葡萄嫌いだもんな」
「……それだけじゃねえけど」
「え?」
「何でもねえ。それじゃ、頼んだよ」
 自分が消費できないものを押し付けただけじゃないか。とはいえ、渡来品の珍しい品だ。その味に興味が湧いて、今回は特別に引き受けてやった。

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