その命はもう愛だ [4/4]
「それをやるには、まず大人しくさせないといけやせんね」
言うと理玖は西洋剣を取り出す。何をするのかと見ていると、いきなり自分の腕を切り付けた。
「ちょっ!? 何やってんの?」
「恐らく、おいらの血を舐めてる間は大人しくしてますよ」
理玖の目論見通り、匂いを嗅ぎつけてくろのが戻って来た。
「……理玖、てめぇやっぱり相当イカレてんな」
犬夜叉さんがドン引きしてる……。
「誉め言葉ですかい? 姫様、腕は食い千切らないでくだせえよ」
くろのは少しずつ流れ出る理玖の血を、大きな舌でぺろぺろと舐める。
「なんだよ~。アタシが走り回る必要無かったじゃん」
「お疲れ」
「ほらほら姫様方、せっかく末の姫様がお腹を出しているんですから」
「はーい」
もろはと一緒に、地面に寝転んだくろののお腹を押してみる。流石にしっかりしていて、乗っても大丈夫そうだ。
「もろはは良いが、とわは落ちるなよ」
犬夜叉さんが私の下に陣取る。
「アタシの心配は!?」
「おめえは妖力あるし、腹の中に何も居ねえだろ」
「そうだった」
理解したもろはが、私のことを滑らないようしっかりと抱き締める。
見上げると、今日も満天の星空だった。
「あったか~い。星きれ~い」
「それにしても、理玖の旦那の血ってそんなに美味いのか?」
「栄養はあるみたいだよ。あ!! 万が一人間に変化したらヤバいかも! 私達がくろのを潰しちゃう!」
気付いて慌てて降りた。地面に座り、ふわふわの尻尾で暖を取るだけに変更する。
暫くもろはと喋っていたが、二人共少しうとうとしてきた時だった。くろのが急に立ち上がる。見ると、理玖が険しい顔をして再度剣を握っていた。
「どうした?」
「犬夜叉! なんか妖怪がいっぱい居る気配がする!」
犬夜叉さんに答えたのは、屋敷の中から出てきたかごめさんだった。もろはも眠気を覚まして匂いを嗅ぐ。
「多分雑魚ばっかだけど、確かにいっぱい居るな」
「どうやらおいらの血の匂いに寄って来たみたいですね。殺生丸様もいらっしゃらない、姫様も犬夜叉様も人間の状態、更に手負いの麒麟と来れば襲わない方が損ですもん!」
「笑ってないで責任取ってなんとかしろよ~」
もろはが面倒くさそうに、大地に手足を投げる。
「当然。かごめ様達はくろのをよろしくお願いします。というか、姫様方にはお見せしない方がよろしいかと」
言うと理玖は闇に消える。暫くすると何かが高速で宙を舞う音がして、それから、人間の鼻にもしっかりと血の臭いが嗅ぎ取れた。犬夜叉さんが溜息を吐く。
「とわ、あいつとくっついた事に反対はしねえけどよ、怪我しねえように気を付けるんだぞ」
「あはは……」
またオーバーキルしてるな。本当は殺生は好きじゃないとか言ってたくせに……。
「終わりやした~。これだけ死体が転がってたら他の奴らも恐れをなして襲ってこないでしょう」
「ケッ。やっぱりアタシらの助けなんて要らないんじゃねえの~?」
「え~もろはやっぱり伊予に行かないの?」
「どうしよっかな~」
「来ないならそれでも構いませんよ。おいらはとわ様を連れて帰ると言っているだけなんで。ついでにせつなも残るように説得してッ!?」
「「「「あ」」」」
油断していた理玖が、頭からぱっくりとくろのに飲み込まれる。
「あっはははは!! やっぱり面白いものが見れそうだから一緒に行く~~」
「腹抱えて笑ってんじゃねえよ! だいたい今のはくろのの所為だろ」
瞬間移動で抜け出した理玖が悪態を吐く。私も笑って、腰に巻いていた布を外すと、理玖の湿った髪を拭いてあげた。
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