宇宙混沌
Eyecatch

第3章:すれ違い [4/4]

「あれ、何か頼んでたの?」
「明日の仕事で使う小道具ですよ」
 夕方には目的地に着いた。予め現地の商人達に頼んであった品物を受け取る。とわ様は興味津々で中を検めた。
「刀に、袈裟に、錫杖?」
「変装用にね。おいらが旅の侍、竹千代が山菜採り、翡翠がお遍路さんってことで」
 耳飾りは目立つから置いて行く。すると腰に得物を提げないといけないが、南蛮の剣は流石に怪しいだろう。
 まあ、この刀にはそれ以外の役目もあるんですが。
 とわ様は刀を鞘から抜く。その刃文を見て、溜息を吐いた。
「やっぱり罪悪感」
「何言ってるんです。今とわ様がお持ちの菊十文字は、ちゃあんと殿様が譲って下さった物じゃありませんか」
「そうだけど、だからってわざわざ贋作を作らなくても……」
 やれやれ、また蒸し返す気か。このところの喧嘩の原因は、色仕掛けの事だけじゃねえ。この刀についてもだった。
 そして、そんな面倒な仕事や要求を突き付けてきた姫様が居る。
「とわ様が仰ったんじゃないですか。令和の世に伝わっていた菊十文字は贋作だったって。誰かが作って歴史に残してやらないといけねえんですよ」
「それはそうだけどさあ……」
「ま、そういう潔癖なところもとわ様の取り柄ですけどね。今回ばかりはおいらの為と思って」
「わかった。明日ちゃっちゃと終わらせてね」
「そのつもりです」
 笑ってとわ様の唇に、己のものを寄せる。暫くそうしていると、いきなり船の中から若い男が飛び出してきた。竹千代め、小さい狸の感覚のままで動くから、やたら落ち着きが無いみたいになってやがる。後で注意しておこう。
「タカマル!」
 竹千代が呼ぶと、一羽の鷹妖怪がその腕に舞い降りる。
「すごいね、姿が違っても御主人様は判るんだ」
 とわ様が振り返って言う。タカマルが一鳴きし、竹千代がその足に結ばれた文を外しながら通訳した。
「顔じゃないところを見てるんだと。お前もそろそろ、出奔した俺じゃなくて菊之助の下に行けば良いんだぞ」
 タカマルは不服そうに鳴くと、竹千代の足元に降りた。
「手紙は弟さんから?」
「そうなんだぞ。あいつは俺と違って優柔不断だから、事ある毎に文を寄越すんだぞ」
「頼りにされてるんじゃん」
「助言するにも責任重大で堪ったもんじゃないぞ……」
「じゃあ返事を書き終えるまで、タカマルはこっちで休むのかい? 飯と寝床はどうしたら良い?」
「お気遣いなくなんだぞ。寧ろやることがございましたら俺を通さず言いつけてもらって構いませんだぞ」
「じゃあ明日の仕事を手伝ってもらおうか」
 承知した、と言わんばかりにタカマルが羽を広げる。
「二人共、気を付けてね。前みたいに大怪我しないでよ」
「その為に今回は三人がかり、いや、タカマル入れて四人がかりなんですよ」
 絶対失敗できないもんでね。何故ならおいらの首が懸かってるんでさあ。

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