「結論から言うと無反応だった」
「無関心と言う方が正しかったりする?」
「そうかもしれん。とにかく母上には一度会いに帰れ。私は雲母を連れて行けるか交渉しに行く。一人で戻れるか?」
「平気平気」
翌朝。支度を整えて船まで来たせつなに言われ、とわ様は村へ戻る。
「もろはと竹千代は?」
「そのうち来るだろう」
せつなは横目でおいらを見てから、海を眺める。
「……解せませんね。こうなる事は解ってたでしょうに」
とわ様は今日は、着物の襟元をきちんと閉めていた。昨夜おいらが印を刻んだから。尤も、それが無くても匂いで判るか。
「とわのことはとわが決めれば良い。それだけだ」
「相手が麒麟丸でも?」
「とわは、お前は理玖だと言っている。それで良いだろう」
おいらは溜息を吐いて、共に海を見た。
「随分と丸くなりやしたね。張り合いがないというか」
「私の人生も、決まっているからな」
「……そうですかい」
せつなも、記憶を奪われていたからとはいえ、とわ様を長い間苦しませた負い目があるのだろう。
「美しい姉想いですね」
「貴様に言われたくはないな」
おいらは笑う。それがせつなの気に障ったようで、慌てて薙刀の切っ先を避けた。