宇宙混沌
Eyecatch

この人生は決まっている [2/4]

「とわ様、そんな恰好で寒くないんですかい?」
「半妖だから平気だよ」
 とわ様と二人、長い道のりを歩いて船に着く。瞬間移動は誰かを連れてはできないのだ。
「布団探しやすね。確か[あね]さんのが……」
「もう寝るの?」
「寝ないんですかい?」
「せっかく会えたんだし、もうちょっと話したいな。駄目?」
 駄目なわけがない。とわ様の為の寝所の支度だけ整えて、二人で寝台に座る。
「死にそびれたって、どういうこと?」
「……実はおいら、妖力で保ってたガワが剥がれて動けなくなっただけだったみたいで。とわ様、角の状態のおいらを弔ってくれたでしょう?」
「そうだったんだ。ごめんね。土の中苦しかったでしょ?」
「とんでもない。あの状態まで弱ったら、抱いて温めて貰っても死ぬのを待ってるだけですよ」
「じゃあどうやって復活したの?」
「麒麟丸様とりおん様が魂と魄を分けてくださったみたいなんです。お蔭で希林理のように成長できて、ほら、この通り」
 とわ様の手を引いて、自分の胸に当てる。
「心の臓もできました!」
「……やっぱり無かったんだ。前は音がしなかったし、胸を刺されても戦えてたもんね」
「はい。あれはあれで急所が無くて便利でしたが、やはり本物の生き物になれた今の方が何かと活力が出ますね!」
 おいらは満面の笑みを浮かべたのに、とわ様の表情[かお]は今にも潰れそうだった。
「私は」
 とわ様はそのままおいらの背中に腕を回して、顔を胸に埋めた。
「紛い物でもなんでも良いから、理玖に生きててほしかったよ」
「……おいら生きてますよ」
「うん」
「泣かないでくだせえ」
「うん」
 頷いたが、おいらの襟巻きはとわ様の涙で色を変える一方だ。
 こういうときどうすれば良いのだろう。姉さんの時は余計なことを言って怒られた。黙って震える背中を撫でる。
「愛してるなんて言ってほしくなかった」
「え」
 その言葉に血の気が引く。おいらが固まっている間も、とわ様は嗚咽の合間に言葉を繋ぐ。
「理玖が死んじゃったら、私は何も返してあげられないのに」
「良いんですよ。見返り目当てなんて愛とは呼ばないでしょうに」
「……うん。ごめん、気持ちがぐちゃぐちゃで、何言ってるのかわからなくなってきた」
「聴くだけで良ければいくらでもお付き合いしますよ」
 おいらがとわ様の髪を撫でると、とわ様は少し安心したように息を吐いた。
 夜が明ける前には知ることになる。自分がどれほど愛しい人を悲しませたのかを。愛する人がどれほど己を好いていてくれたのかを。
「もう独りにしないで」
「仰せのままに」
 涙で崩れた顔が、物欲しげにおいらを見上げた。
 おいらの人生はもう決まっている。とわ様がおいらの欲しい物をくれたように、おいらはとわ様の望むものをなんでも差し出そう。
 銀の髪を指で梳くように、とわ様の頭を包みこむ。涙で濡れた唇は、海の水のような味がした。

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