宇宙混沌
Eyecatch

この人生は決まっている [1/4]

 ドスッ。
 頭の横をとてつもない速度でとわ様の拳が通過し、屍屋の壁が割れて腰を抜かした時、おいらの人生は決まった。これから何があってもとわ様の尻に敷かれる、と。
「こりゃ尻に敷かれる旦那に決定だな」
「自分でも解ってること、わざわざ繰り返さないでくださいよ」
 先に帰った筈のもろはが暖簾を潜る。地べたに転がったままのおいらは、恥ずかしさがまた込み上げてきて顔を手で覆った。
「ほう」
 せつなの声に指の隙間から見れば、珍しく笑っている。しかもにやにやと。
「なんであんたが面白そうにしてんだ」
「そりゃあ、とわは私の姉だからな」
「うん?」
 よく解っていなさそうなとわ様に、せつなが擦り寄る。
「とわは私が頼んだことを無下にはしないだろう?」
「もちろんだよ」
「そしてお前はとわの下僕。つまりそういうことだ」
「つまりもそういうこともないだろ!」
 はあ、と溜息をつき、ようやく立ち上がる。
「ていうか会いに来るならもっと早く来いよな~」
 もろはが口を尖らせた。
とわがどれだけ落ち込んでたと思う?」
「それは申し訳ないと思ってますが、こっちも色々あったんですよ。麒麟丸の船を漂流させておくわけにもいかないし」
「そういやすっかり忘れてた。何処にあったの?」
「随分流されて、この国を飛び出してやしたね」
 とわ様に答えて、その目を見る。落ち込んでいた、か。
「お若いの、見つめ合うくらいならそういう宿か廃寺にでも行ってくれ」
「おいら獣兵衛さんよりは歳いってると思うんですが。とにかく今日は遅いし、この辺でお暇しますよ」
「帰っちゃうの?」
 眉を下げて強請られると理性がぐらつく。人の目があるのでなんとか耐えた。
「こっから一番近い船が泊められる場所に置いてあるんで、そこに戻るだけでさあ」
「それって[うち]より遠い?」
「とわ様の家はどちらで?」
「此処からなら歩いて半刻程度だ」
 答えたのはせつなだった。
「とわ、理玖を連れて帰るくらいなら、お前が理玖の船に行け」
「え、でも」
「家には父上も居るんだぞ。父上がお前達の仲を許すなら外泊しても構わないだろうし、許さないのであればわざわざ喧嘩を売りに行くこともあるまい」
「せつなって難しいこと考えるんだね……」
「とわが馬鹿なだけだろう」
「失礼なー。これでもあっちの世界では難関中学に通ってたんだからね?」
「なんかん……? まあ良い。両親には私から伝えておく。その反応を見てからでも良いだろう、挨拶は」
「ま、反対されたら、そのまま船に乗って遠くへ行っちまえば良いだけだもんな」
 もろはの補足に、せつなは頷く。
「えらく親切ですね。どういった風の吹き回しで?」
 問えばせつなは鋭い目つきをこれでもかと尖らせた。
「夜が明ける前には知ることになる」

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