宇宙混沌
Eyecatch

第1章:THE DOSSSS with Tramonto Familia [3/6]

「ところでよぉ、なんでこの島なんだ?」
 練習が始まって何日か経った頃、食事中にビィがアオイドスに尋ねた。
「綺麗な島だけど、此処の住人がDOSSや残虐三兄弟みたいな音楽を好んで聴くようなタイプには見えねえぜ」
 ビィの言う通り、一言で言えば、この町の住人は「上品」であった。立ち並ぶ民家も美しくて大きなものが多く、所謂高級住宅街の様相だ。ディストーションを効かせたギターの音色なんて、寧ろ下賤だと思っていそうだ、という偏見は、何もビィだけが抱くものではない。
「……ファンの新規開拓さ」
 短く答えると、アオイドスはごちそうさま、と席を立ってしまう。隣に座っていたジェームズが複雑そうな表情を浮かべた一方、近くに座っていたドランクはすっきりとした表情を見せる。
「ベンジャミンって、もしかして、あの……」
「知り合いか?」
 スツルムの問いには首を横に振る。
「確か、ベアトリクスの本来の許婚がそんな名前だった。家もこの辺だった筈だよ。でも、二歳を過ぎても発話がなかったからって、ベアちゃんが生まれる前に話が立ち消えたとかなんとか」
「それでお前に話が回ってきたのか」
「まあね。いくら僕の家の方が格が上だからって、十歳近く年上の相手と積極的に縁談組ませようなんて話にはならないからねえ、普通。それとなく訊いたらそんな話が」
 ドランクは言葉を切る。ジャスティンが凄い形相で睨んでいる事に気付いたからだ。
「な、なあに~ジャスティン君? すっごく言いたい事ありそうな顔してるねえ」
「いいえ、特には。ただ貴方の様な、恵まれて生まれてきた癖に身を窶している人間を見ると、虫唾が走るだけです」
「ジャスティン、怒りをぶつけるなら俺にしろ! 勿論言葉攻めじゃなくて物理的に虐める方で頼む!」
「食事の場でくらい自重してくださいよ、この豚が」
 ジャスティンも食事がまだ残っているのに席を立つ。やれやれ、とドランクは肩を竦めた。
「そういう事を言われるのが嫌だから、素性は隠しておきたいんだけどなあ」
「バレたのはお前のミスだろ。忘れたのか?」
「いいや。未だにこの艇に乗る度、誰かに『お姫様事件』って揶揄われるもんね」
 フェリも先日、その単語を耳にした。どうやらフェリがまだ旅をしていない頃に起こった事件らしい。後でジータか誰かに話を聞こう。
「ジャスティン君の身の上は知らないけどさあ~。それを言うとアオイドス君だって結局身分を隠してるじゃないの、ねえ?」
 話を振られたバレンティンは語る。
「俺もベンジャミンの過去についてはよく知らない。だが、ジャスティンのことはベンジャミンが拾ったと時々言っていた。それに……」
 バレンティンは自分の皿に乗った料理を綺麗に平らげてから、立ち上がる。
「幸福な生い立ちであれば、ジャスティンが猟犬になる事もなかったろう」
 三人が居なくなったところで、ジェームズが答え合わせをする。
「貴方のご想像の通りです、ドランクさん。この町の外れに、僕とベンジャミンの実家があります。ベンジーは両親に自分の音楽を聴かせて……認めてもらいたいんですよ」
「そりゃあ、また……無粋なタイミングですね」
「ええ。でもだからこそ、僕は絶対に今回のライヴを成功させなければならない」
 ジェームズは椅子から降りる。背もたれにかけていたジャケットを着込んだ。
「僕は実家に話をしに行きます」
「あたしが護衛しよう」
「お願いします」
 ジェームズはスツルムの申し出をすんなりと受け入れた。とても治安が良さそうな町なんだが、とフェリ達は首を傾げる。
 でも、昔住んでいたジェームズがそう言うのだから、と、その時は大して気にも留めなかった。

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