スツルムの上客 feat. Sturm [6/6]
「灯り、消してほしい」
ドランクは言う通りにしてくれた。取引無しで交わる初めての夜。やっぱり、昔は優しくする気が無かったんだな。
「おっぱい大きくなったねえ」
ベッドで向かい合って座る。乳房を揉まれ、熱い吐息がこぼれた。
「その……おっぱいって言うのやめろ」
あと、そんなに大きくなってない。
「恥ずかしい? 恥ずかしがってるスツルム殿可愛いなあ」
「うるさい!」
「はいはい。じゃあ静かにするね」
押し倒されたかと思うと、唇が降ってくる。唇、首筋、それから鎖骨。吸い付かれたので思わず頭を叩いてしまった。
「やめろ。痕が付く」
「痛~い。昔は怒らなかったのに」
「今は服で隠れないからだ!」
「あー……それは失敬」
ドランクは代わりに胸の先端を舌でなぞる。同時にもう片方の胸と秘部を触られ、思わず声が出た。既にシーツにまで滴っているのが解り、脚を動かすと、突然ドランクがあたしを四つん這いにさせた。
「んぁっ」
穿たれた衝撃。以前とは違う場所に当たる感覚。
「やっぱり……後ろからなら奥まで入るかどうか、試してみたかったんだよね」
律動が始まる。ドランクが奥を突く度に声が漏れたのは、初めての体勢だったからだろうか、それとも。
「気持ち良い?」
「んっ……気持ち良い……」
でも、これじゃ何も見えないな。ドランクの顔が見たい。せめて匂いを嗅ぎたい、と思っていると、ドランクが一度体を離す。もう終わりか? と不安になったが、今度はドランクがあたしを抱き抱える様に向かい合わせにしてくれた。
「僕も気持ち良いよ」
下から突き上げられる。あたしは体が離れない様にドランクの首に腕を回した。ドランクが長い長い口付けをする。時々漏れる吐息と、体がぶつかりベッドが揺れる音しか聞こえない。
愛している。そう言うのは簡単だが、言えばただの贖罪に捉えられかねなかった。でも、言わなければ次にも進めないのだろうか。
ドランクがキスをやめ、あたしの顔を見る。いつかの夜も見た、真っ直ぐな瞳。一晩中頭から離れなかった、あたしを恋に落とした青年の面影がそこにあった。
ドランクはあたしを再び押し倒すと、あたしの本当の名前を呼んだ。優しい響きに、あたしは全てを許してもらえたと知る。感謝の気持ちと愛情を込めて、あたしはドランクの事を抱き締めた。
「いやなんであたしの名前を知ってるんだ?」
明朝。あたしの低い声に、隣で寝ていたドランクが飛び上がった。
「お前、やっぱり手紙読んでただろ!」
「ひ、ひぃ~。やめて! 裸に直接は流石に血が出ちゃうから!」
剣を振り翳そうとしたが、ベッドの隅に逃げ込まれる。
「あと、たまたま見えちゃっただけだから! 全部は読んでないから!」
あたしは長い溜め息を吐く。まあ、あたしもその前髪の下の事を知っている事はまだ教えていないし、お互い様か。
シャワーを浴び、朝食を摂り、揃いのマントに身を包む。
「そろそろ行こうか」
「ああ」
外は明るかった。隣に立ったドランクの顔を見上げると、へらへらと締まりのない顔がこっちを見る。他人を欺く為の顔じゃないなら、良い。
「この空は広いからさ」
歩き出してから数歩も行かないうちに、ドランクが話し始める。今日の話は下らなくないと嬉しい。
「全然確証とかがある訳じゃないんだけど、空域の外とかには、異種族でも子供を授かれる技術とかがあるかもしれないよね。スツルム殿は何人欲しい? 僕との赤ちゃん」
「そういうのを何て言うか知ってるか?」
「捕らぬ狸の皮算用?」
「知ってるなら何故話す」
「痛い!」
あたしは剣で一発ドランクの尻を小突く。何人欲しいか、か。
「六人くらい」
「多いね!?」
「そうか?」
あたしは六人姉弟だったが……。
「じゃあ、その分お仕事頑張らなきゃね」
「ああ」
これから先の事なんて、良い事も悪い事も、何も分からない。それでも今日は、やけに日差しが眩しかった。
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