スツルムの上客 feat. Drang [1/6]
「何処へ行く」
深夜。足音を忍ばせて自分のベッドから抜け出したものの、スツルム殿の鋭い声が飛んで来た。
「ど、何処って……仕事も終わったし夜遊びでもしようかなーって」
別にこれが初めてじゃない。スツルム殿だって知らない筈はない。僕だってたまには女の子と遊ばないと身が持たない。
特にこんな魅力的な少女を相棒として仕事をしていく上では。
「……どうせなら、あたしを買ってくれないか?」
鼻の辺りまで布団を被ったまま、スツルム殿がそんな事を言ってきた。
「えぇ!? どうしたのスツルム殿? もしかして間違えて僕のお酒飲んじゃった?」
「飲んでない」
「じゃあどうして?」
「……金に困っている」
「はぁ?」
金? それなら今日の仕事の報酬をきっちり半分に山分けして、たんまりとは言わないまでもこれから数日間は遊んで暮らせるくらいにはある筈だ。現に僕だってこうして遊びに行こうとしている訳だし。
……まあ、でも、詳しく事情を聞き出すのも野暮か。
「なんだ~。だったら早く言ってくれれば良いのに! そんな事しなくても貸してあげるよ、特別に金利は安くしてあげ……」
「駄目だ! ……返せる当ては無いんだ」
「じゃああげるよ。大金は無理だけど、僕とスツルム殿の仲じゃない」
「仕事の対価じゃない金は受け取りたくない」
やれやれ、強情な人だ。僕はスツルム殿のベッドに腰掛けると、角の生えた頭を撫でてやる。
「君はまだ子供だ」
自分で思ったよりも真剣な声色が出た。慌てて手を引っ込め、いつもの調子に戻す。
「未成年に無体を働いたってなったら、僕が捕まっちゃうからね」
「そうだな。だからあたしはこの方法では稼げない」
「解ってくれたならそれで……」
「でもドランクとなら、誰にもバレない」
……それはそうだ。金は傭兵業の取り分を調整したと言えば良いし、経費削減の為に同じ部屋に泊まるのもいつもの事。僕は少しだけ悩んで、妥協する。
「じゃあ上半身だけ触らせてもらおうかな」
少し怖い目に遭わせたら凝りて言わなくなるだろうと思って。
明かりに火を灯し、財布から相場より少し多めに金を取り出した。起き上がったスツルム殿に握らせる。表情からして足りなさそうだが、一先ず彼女はそれを自分の荷物にしまった。
僕は靴を脱いでベッドに上がりこむ。いきなり口付けると、やはり怯えた様に肩が飛び上がった。
「ん……ふ……」
舌を突っ込んで様子を窺う。泣き出すようなら流石にやめてあげようと思ったが、大丈夫そうなので胸に手を伸ばした。払った分の仕事はしてもらおう。
「あっ……」
寝巻の上から包み込むように揉んでやる。いやこれ僕の手でも包み切れないぞ。あの全身がっちり覆った服でかなり潰してるんだな……。
唇を離すと、すっかり上気した顔の少女が上目遣いに僕を見た。あ、これやばいかも。その言葉が聞こえたかのように、スツルム殿の視線も下へ。
「あ、こっちは後で自分で何とかするから!」
「良いのか?」
「お金足りなかったんだったら、明日もおっぱい触らせてくれれば良いよ」
そう言って離そうとした手を掴まれる。
「今日続きをしてくれても良い」
僕は大きな溜め息を吐いた。怖がらせるどころかその気にさせてしまったようだ。
「今晩だけだよ。絶対内緒だからね? 美人局とかしないでよね!?」
「大丈夫だ」
僕は観念して、財布から本番の場合の相場を出す。渡そうとして、ある事に思い当たった。
「スツルム殿、これが初めてなんだよね?」
「ああ」
その答えを聞き、黙って値段を倍にする。
「こんなに……?」
この数日の稼ぎと同じくらいだ。
「処女の場合はこれくらいが相場だよ。未成年のプレミア付きだからもっと払っても良い」
「いや、それは……」
「君が売ろうとしてるのはそのくらい価値がある物なんだよ。僕なんかに売っちゃって良いの?」
「ああ」
即答するとスツルム殿は札束を受け取った。意外な答えで暫く僕の方が固まってしまう。
「そう」
では、と遠慮なく服の下に手を伸ばす。金は払ったんだから仕事はちゃんとしてもらうよ。
僕は正直、スツルム殿にここまでさせる理由が羨ましかった。
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