宇宙混沌
Eyecatch

第3章:Love Still Alive


「ドランク!」
 赤髪の少女が涙を浮かべていた。ドランクの意識が戻った事に安堵したのか、そのまま号泣して彼の胸に縋り付く。
 ドランクは記憶を整理した。蘇生魔法を使って、右目を失った事は覚えている。手を当てれば、何か詰め物がされて包帯で覆われていた。
「何日くらい寝てたの? 僕」
「そんなに長くない。六時間くらいの筈だ」
 でも、どうしてそこまでして、彼女の事を助けたかったんだっけ?
「馬鹿とか言って、悪かった……」
 ああ、思い出した。愛を告白したのだったか。
「……あたしも、お前の事は好きだ。だから無茶な真似はよしてくれ」
 好きだ、と想い人から言われたのにも関わらず、ドランクの心は凪いでいた。馬鹿、と突き放されて少し傷付いた筈の感情も、愛してる、と囁くまでに積み上げてきた筈の恋慕の数々も、それがどんな心地だったのか、思い出す事が出来ない。
「なるほどねえ……」
 磨り減るどころの騒ぎではなかった。
「何が?」
「スツルム殿、自分の身に何が起こったか覚えてる?」
「……魔物にやられた、筈だった。気付いたらお前が隣で倒れてて、右目が無くて……」
「大っぴらに話せないから、内緒にしててほしいんだけど。僕ね、君に蘇生魔法を使ったんだ」
 ドランクは簡単に概要を説明する。そして、代価として自分が何を支払ったのかを。
「そういう訳でごめん。折角気を変えてもらったみたいだけど、僕の方はもう、昨日までの僕が君をどう思っていたのか、記憶はあるけど理解は出来ないんだ」
 廃人と化していない事から、精神の方も肉体と同様、一部しか犠牲になっていない事は明らかだ。しかし、自分が一体何の感情を失ってしまったのか、ドランクには把握する事すら出来なかった。それは右目の様に、鏡で見たらすぐ判るような代物ではない。
 ただ、スツルムへの恋心は失ってしまった事、そして苦しみという感情だけは己の中に残存している事は判っていた。
「あたしの所為だ……」
 そう言って泣き続けるスツルムを見るのは、ドランクにとってただただ苦しいだけだった。

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