二日目 朝
「刺繍の進捗どう?」
「ん」
「うわー綺麗。これ何の柄?」
「特に何とか無い。自分で考えた」
「えー凄い! スツルム殿天才なんじゃない?」
「おだてるな。ドラフならこれくらい誰でもできる」
「また~照れちゃって~」
「照れてない!」
二日目 昼
「刺繍の進捗どう?」
「うるさい。何度も訊くな」
「だって本が読めなくて暇なんだも~ん」
「…………」
「見てて良い?」
「勝手にしろ。手元見すぎてまた酔うなよ」
「気を付けまーす」
「……お前、丸くなったよな」
「え、そぉ?」
「昔のお前なら、あんな奴等、この程度で許さずに全員殺してるだろ」
「あはは。そうかもね。……でもまあ、スツルム殿も許してあげたかったでしょ?」
「……次からは容赦しないで良い」
「スツルム殿ってば怖ーい」
「お前に言われる筋合いは無い」
「……昔って言うほど僕達、付き合い長くないよね」
「そうだな」
「ってことはさ、僕はこの短い期間で結構変われたって事?」
「……かもしれない。でも、それが良い事かは、『お前』がそれを望んでいるかどうかだろ」
「スツルム殿は手厳しいなあ。望んだかって?」
「…………」
「少なくとも、『僕』の意思があった事は事実だよ。風が強くなってきたね」
「……そうだな」
「発つ時は天気良かったのにねー」
二日目 夜
「スツルム殿はさ、今の僕と昔の僕、どっちが好き?」
「別にどっちも好きじゃない」
「えー酷いなあ……」
「本当の『お前』が……」
「ん? 何?」
「……いや、なんでもない」
「え~気になっちゃうな~」
「気にするな! さっさと寝ろ!」
「スツルム殿は寝ないの?」
「あともう少し」
「そう。おやすみ」