宇宙混沌
Eyecatch

第2章:誘拐されるドランクちゃん [3/3]

「一体何があったの?」
 ジータが宿に戻ると、この世の全ての怨念を込めた様な顔のジャスティンがロビーに座っていた。隣に座っていたアオイドスが事情を説明する。
「フェスに行ったのは良いが、曲の合間に毎度声をかけられてね」
「ベンジャミンをナンパとか良い度胸してるじゃありませんか」
「片っ端からジャスティンが始末してくれて、俺は楽だったが」
「当たり前です。貴方に指一本触れさせるものですか」
「まあ、それだけ美人なら声もかけるだろうな」
「ちょっとそれどういう意味」
 向かいのソファーに腰を下ろしてラカムが漏らした言葉に、ジータが白い目を向ける。
「あ、いや……深い意味は無く」
「俺の美しさは罪だからな!」
 それでもアオイドスはフェスを満喫してきたらしい。ジータもラカムの隣に座った。
「遊びに行っていた僕達が訊くのもなんですが、そちらの収穫は?」
「遊びじゃないぞジャスティン。声の出し方の一つでも覚えて帰って来ただろう?」
 ジャスティンは何か言いかけたが、やめる。ジータが小屋の事を説明した。
「流石に明日は俺達も行こう。この声では、既存曲と音域が違ってそのままでは歌えないからな」
「僕は普通に男に戻りたいです。少し動いただけで疲れてしまって」
「やっぱり体が小さくなった側は不便だよねー」
「ジータはそうでもないのか?」
「最初トイレに戸惑ったけど別に。あ、でも折角水着新しくしたのに着れないのはやだな……」
 男になった事自体には、そんなに不便さを感じていないらしい。
「おかえりなさいジータ!」
「ただいまルリア」
 食事に行こうとしていたのか、そこにルリア達が降りてくる。ジータとルリアが並ぶと、似合いのカップルに見えた。
 そうだよな。お前だってこんなおっさんじゃなくて、歳の近い奴とくっついた方が良いに決まってる。
「今日は皆外で食べるの?」
「ああ。よろず屋が経営するレストランを貸し切りにしてくれた」
 カタリナが説明する。
「なんだか今年は随分親切だよね」
「そうだな……。そうだ、折角だしあの二人も誘おうじゃないか。二人とも慣れない体で心細いだろうからな」
 カタリナの提案にスツルム達を呼びに行こうとしたところ、巨躯のドラフが階段を降りてくる。
「丁度良い所に。スツルムも――」
「ドランクは帰ってきていないか?」
「え?」
 発せられた言葉に、皆は顔を見合わせる。外はまだ明るいが、とっくに図書館は閉館した筈だ。
「誰か見た?」
「いいや」
 その様子に、スツルムは大きな溜息を吐く。
「やっぱり面倒な事に巻き込まれたようだな」
「やっぱりって?」
「あいつ、今の自分が貧弱な体だという事をちゃんと理解していなかったみたいだからな。調子に乗って羽目を外して、いつもなら逃げるなり反撃できる所を失敗したんじゃないか? 宝珠も置いて行ったし」
 めちゃくちゃあり得そうな展開予測に、全員が納得する。
「まあ良い。探してくる」
「私も行くよ!」
「飯に行くんじゃなかったのか?」
「そうも言ってる場合じゃないでしょ! ドランクは今は女の子なんだから!」
 何かあったらお嫁に行けなくなっちゃう~とやきもきするジータの横で、スツルムはもう一度溜息を吐いた。
 実質的に自分がドランクの嫁状態なのは、もう暫く黙っておこう。

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