宇宙混沌
Eyecatch

第2章:誘拐されるドランクちゃん


「此処か」
 洞窟の入り口に着く。ジータが杖で明かりを灯した。
「何の変哲もねえ洞穴だな。生き物の気配もねえし」
 言いつつもラカムは銃を取る。二人は慎重に奥へ。
「にしても深いな」
「でしょー。あ、私達が光を見たのはこの辺り」
 現場に到着すると、ジータは光量を上げる。洞窟はまだ先まで続いていた。
「別に変わった所はねえな」
「どうする? もっと奥に行ってみる?」
「そうだな」
 さらに先に進もうとして、ジータが足を滑らせる。
「うわっ」
「おっと」
 ラカムがジータを羽交い絞めにするような形で支えた。ジータが女の姿だったら胸に手が当たる所だった。ラカムは心底ほっとしながらジータを立たせる。
「ありがと」
 此処まで辿ってきた道程と同じくらい先へ進むと、山の反対側に出た。
「何この建物?」
 出口のすぐ脇に、小さな倉庫の様な建物があった。周囲は入り口側と同じく草や木々に囲まれていて、他の建物は無い。
「鍵がかかってる」
「窓は中から目隠しが貼ってあるな。どっちにしろ人の気配はしねえが」
 ラカムが懐中時計を取り出し、時刻を確認する。
「此処に来るまでに結構かかっちまったな」
「一旦戻って、詳しい調査は明日の朝からにしようか」
「そうだな」
 打てば響く、団長と操舵士としての関係。
 それで良いじゃねえか。わざわざこんな子供[ガキ]に手を出さなくったって。
「ほら行くよ」
「あ、ああ」
 少年が洞窟の入り口から呼ぶ。ラカムは雑念を追い払い、ジータの元に駆け寄った。

「いけない、遅くなっちゃった」
 ドランクは図書館が閉館した後、ぼんやりと路上ライヴを聴いて回っていた。調べ物は、芳しい結果ではない。
[いった]! ちょっと、気を付けてよ」
「あぁん? 嬢ちゃんがぶつかって来たんだろうが」
 宿に帰ろうと踵を返したところで、エルーンとヒューマンの男二人組に絡まれる。
「いや、今わざとぶつかって来たよね?」
 幾度も死線を潜り抜けてきた。今更、一般人の気配に気付かない訳が無い。
「言うねえ~。まあ、生意気なのも可愛いね」
 褒められたが全然嬉しくない。無視して去ろうとしたが、腕を掴まれてしまった。
「おっと待ちなよお嬢さん」
「人にぶつかっておいて謝罪も無しとは良くないなあ」
「お嬢さんって歳でもないけど? あと僕男だし」
 二人は腹を抱えて笑う。
「おいおい、服からはみ出そうなオッパイ付けといてそりゃねえだろ」
「面白い嘘をつく子だねえ。ねえ、ちょっと俺達と遊ばない?」
 ドランクは顔を顰めた。普段は自分がこういう態度で声をかける側だが、逆の立場だとこんなに不快なのか。
 男の手を振り払い、逃げる。人の多い大通りはまた別の誰かとぶつかりそうだったので、一つ奥の道を走ろうと路地に駆け込んだ。
「待ちなよってば」
 が、次の瞬間には追いつかれそうになる。いつもみたいに速さが出ない。それに、もう息が上がってきた。
「やばっ」
 路地の向こうは水路であった。そんなに深くない筈なので、手帖が濡れない様に頭の上に載せて行けば逃げられるかもしれない。
 だが、怖いものは怖いのだ。飛び降りるのを一瞬躊躇した隙に追い付かれ、ドランクは後ろから口を塞がれた。

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