「そこのお兄さん! 可愛い彼女さんにアクセサリーなんかどう!?」
「あはは。生憎、僕達恋人同士じゃないんだよね~」
ドランクはあの後何事も無かったかの様にギルドに現れて、再度祭りの仕事を打診してきた。どうも、あたしに話を持ってくる前に二つ返事で引き受けていたらしい。全く勝手なんだから。
『……しょうがないな』
そう答えた時の、キョトンとした顔が脳にへばりついて剥がれない。
「もう三回目だね~。次の担当時間まで別行動にする?」
まあ、こんな浮かれた場所を若い二人が歩いていたら、カップルだと思うのが普通だろう。ドランクも良い加減否定するのに疲れたらしい。
「否定しなければ良いだろ」
「え? 何か言った?」
「別に」
あたしの声を聴き取ろうと屈んだドランクの顎を、下から押してやめさせる。髭は綺麗に剃られていた。
「別行動して良いのか?」
「だって勘違いされるの嫌でしょ?」
またそうやって人の気持ちを勝手に決めつける。
別に嫌ではない。そう素直に言えないのがもどかしかった。あたしが無言で歩みを速めると、ドランクは無理に追っては来なかった。
「気を付けてね~」
あたしを誰だと思ってる。警備担当だぞ、この祭の。