宇宙混沌
Eyecatch

第5章:美男を脱がせたいジータちゃん [8/8]

「君の吸ってる煙草良かった。高くないのに美味しいし」
「そうか」
 ラカムは工具探しと整備を終え、一服しに甲板に出た所、モデル業から解放されたのか、同じく一服しているドランクと鉢合わせた。吸っている銘柄は、ラカムが手に持っている物と同じだ。
「コスパが良すぎて吸いすぎちまうのが玉に瑕だな」
「それは……まあ……。そう思っていつもはもっと高いの吸ってるんだけど」
 そもそも毎日吸わないし、と、港から見える夕暮れの空を仰いだまま、ドランクは呟く。
「……何か嫌な事でもあったのか」
「どうしてそう思うのかな?」
「話によりゃあ、お前、生まれは貴族かなんからしいじゃねえか。俺みたいに子供ん時から周りが吸ってたとかじゃねえだろ?」
「そりゃあね。でも、君に話さなきゃいけないとは思わないねえ」
「……それもそうだな」
「僕なんかより、もっとちゃんと見といてあげないといけない人が居るんじゃない?」
「……どういう意味だ?」
「さあね」
 ドランクは吸い終わった煙草を空の底に落とす。口の両端だけを吊り上げて、金に光る瞳が意味深にラカムを見た。
 彼が去った後、ドランクは煙草を吸いたかった事も忘れて、もう見えないその背を振り返る。
「……てめえ……っ」
 ジータに何かしたらただじゃ済まねえぞ!
「あ、そうそう」
 唇を噛み締めて険しい顔をしていると、ひょこっとドランクが顔を出してきて、驚く。
「うわっ、まだ居たのかよ」
「僕も瞬間移動はできないからねえ。じゃなかった、アオイドス君が新曲のゲリラライヴをやるから、楽譜を取りに来て練習しろってさ。ちゃんと伝えたよ」
「はぁ!?」
 ドランクは手をひらひらと振って、今度こそ艇を降りていく。ラカムは頭を抱えた。
「俺の休日が……」
 ラカムの悲愴な呟きが、夕暮れに消える。

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