宇宙混沌
Eyecatch

第5章:美男を脱がせたいジータちゃん


 モデルの日当三万ルピ。ルナールが提示した価格はシェロカルテの時給よりもかなり良かったらしい。
 グランサイファーに戻る道すがら、ドランクに尋ねる。
「そういえば、ユーステスと犬触りに行ったんでしょ? どうだった?」
「可愛かったよー。動物と触れ合うって良いね。温かい気持ちになれる」
「そっか。楽しかったんなら良かった」
 いや、私はスツルムとどうなったのかが知りたいんだけどね。でも、ユーステスと三人だったなら、発展するものもしないか……。
「あれからずっと生き物飼いたいなーって思ってるんだけど、仕事柄無理だからねえ」
「じゃあまた、今度は私達と行こっ? スツルムももちろん一緒ね」
 グランサイファーの泊まっている港に着く。艇を整備している人影が見えた。
「ラカム! おつかれ!!」
 距離が遠いので叫ぶ。ラカムは気付くと、掌をひらひらと振った。
「そう言えば、ルナールさんって耽美絵が描きたいんでしょ? モデルって僕一人で良いの?」
「「確かに」」
 ルナールと同時に呟いた。カラミティ・ピクチュアルを生み出すには、ドランク一人だけじゃなくて、もう一人イケメンを連れてくるべきじゃない?
「……ラカムって身長[たっぱ]だけはあるわよね……」
 ルナールが腕を組んでそんな事を言った。
「この際ラカムでも良い?」
「GO」
「ちょっとドランク手伝って。昔ラカムの事人質にしてたでしょ?」
「捕まえたら良いのかな?」

 という事で五分後。
「なんで俺がドランク[こいつ]と絡まなきゃいけねえんだよ!!」
「えー折角捕まえたのにー?」
「言ってる傍から顔を近付けるな! つーか、お前は気色悪くねえのかよ、おっさん同士で絡んで」
「別にー。それに僕まだおっさんじゃないし」
「そうよ。自分が老け顔だからって他人にも押し付けるのは良くないわ」
 ドランクとルナールの容赦無い攻撃にラカムが目に見えて落ち込む。ちょっと可哀想になってきた。
「ま、まあ、ラカムは此処まで操舵してきて疲れてるもんね。ごめんね、整備してる所邪魔しちゃって」
「当たり前だ! ったく。昼寝するから起こすなよ。整備はその後にする」
 解放してあげると、ラカムは煙草を取り出しながらルナールの部屋を出て行く。
 そう、その匂いだ。ドランクの髪からするの。
 スツルムは今居ないって言ってるし、吸ってるのドランクだよね? 吸っている所を見た事がない所為で、良からぬ疑念が浮かんでしまう。もしかして、同じタバコを吸うホステスが居るお店に通ってるんじゃ……。
「とにかく、他にモデルをしてくれそうな人を探しましょうか」
 ルナールが言った時、きゅるきゅる、と私のお腹が鳴った。恥ずかしい、けどもうお昼時なのか。
「その前にお昼にしよっ。ドランクもどうぞ」

 食堂から繋がっている厨房室では、ローアインがせっせと皆の昼食を作っていた。
「キャタリナさんが買い出してきてくれたこの野菜で~スペシャルにイケてるサラダを……」
 何か良くわからない独り言を言いながら調理するのは彼の癖だ。
 どうやら私達が一番乗りみたいで、誰も居ない食堂側からカウンター越しに声をかける。
「おっ? 団長はえー。まだ前菜しか出来てねー感じよ?」
「ローアイン! 肉の下ごしらえってこんな感じか?」
「トモイ! それ、っべーっしょ! 小麦粉かけすぎじゃね!?」
 厨房の奥の方から、手伝っていたらしいトモイとエルセムの声が飛んでくる。
「結局俺が監督ぅ? しょーがねーなー」
 ローアインは私に手を上げて挨拶すると、奥へと消える。
「あ、ルナール、ローアイン達とか良いんじゃない? お昼終わったら夕方まで時間空くし」
「お断りね」
 あ、ルナールはこういうタイプ好きじゃないんだっけ。同じエルーンだけどドランクとは雰囲気違って、並べると良さそうだと思ったんだけどな……。
「団長達の肉だけ先焼くわー。つか、そのマッチョ誰?」
 ローアインがドランクの肩に付いた逞しい筋肉を一瞥し、敵意のある視線を向ける。
「ドランクだよ。この前の懇親会に遅刻してきた」
「えっ、あの『お姫様』って跪いた傭兵サン? マジかよ着痩せ超ウケる」
 笑いながら、盛り付けたサラダを私達の前に並べていく。ドランクの分はお皿を追加して、お代わりの分から新たに盛り付けた。ていうか、ウケるポイントそこなんだ?
「僕の仕事は、弱そうに見える方が得な場合が多いからねー」
 いや、ドランクも何普通に「お姫様」の件をスルーしてんの。そんなに言い慣れてたんだ、あれ。
「で? 今回はDoいう用事で来たワケ?」
「ルナールの絵のモデルをしてもらうの。ねえローアイン、もう一人モデルを探してるんだけど、誰が良いと思う?」
「トモイとかこの後暇なんじゃね?」
「却下」
 私と同じ事言って即答されてる……。
「ちょ、ルナールは俺達にやたら厳しくね? まあ、ルナール好みの奴と言えばー……」
 私達は彼女の萌え(燃え)要素を思い出す。色白で細身の筋肉質、髪は長くてサラサラ、儚さや上品さがあるとなお良し……。体格から自然とエルーンかヒューマンになってくるわね。身長は、ドランクと並んで差がある方が絵になりそうだけど……。
「そういえば、さっきラカムと並んでるの見て気付いたけど、ドランクって思ってたより背が低いんだね」
「普段はスツルム殿と並んでるからね。スツルム殿と比べたら、実際より大きく見えちゃうのかも」
「まあ、もう少ししたら皆来るっしょー」
 ローアインは肉を焼く為に裏へと回る。私は皆の顔を思い出しながら、また鳴りそうなお腹に耐えろ耐えろと言い聞かせた。

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