第1話:男の子になっちゃったジータちゃん [4/5]
「ラカム! 助けて!」
「急いで大柄な男性ドラフ用の服を買いに行ってきてくれないか」
「あとエルーンの女物の服も」
「俺達で行こうと思ったが流石に動き辛くてな」
「な、なんだよお前等?」
十代半ばの見知らぬ少年と、吃驚するくらいの美女に声をかけられ、ラカムは困惑した。とりあえずイカを焼いていた手を止める。
「ジータよ! 信じて!」
「うちの団長の名を騙るな」
ラカムに鋭い視線で睨み付けられ、ジータはたじろぐ。ラカムって、敵にはこんな顔してるんだ。
「この顔を見ても解らないのかアカイドス」
女になっても美声のアオイドスが、髪を掻き上げてラカムに顔を良く見せる。
「こんな美貌を、神がそう簡単に何人にも与える訳が無いだろう」
「……確かにアオイドスに似てるな」
だがどう見ても目の前に居るのは女だ。控えめながら胸も膨らんでいる様に見えるし。
黙って紅髪の美女の後ろに立っていたショートカットの少女が溜息を吐いた。
「良い加減解ってくださいよ。洞窟探検をしていたら何故だか性別が入れ替わってしまったんです。服が着れなくなってしまったので、スツルムとドランクがまだ奥で待っているんですよ」
「何? あいつらも?」
そういや午前中に見かけたな。ラカムは説明した少女をしげしげと見る。
「お前は……ジャスティンだな……」
声がいつもより高い気がするが、他は殆どいつものジャスティンだ。
「ええ。何なら、ベンジャミンも背中の傷を見せれば良いんじゃないですか?」
「確かに」
言ってシャツを脱ごうとした美女を止める。
「わかったわかった、信じるよ。で、お前ジータなのか」
「そう……。なんでか私だけ髪の毛変わっちゃって……」
言われてみれば、男の体格になってパツンパツンになっているが、着ている服はジータの物だ。
それに、瞳が同じだ。
「そうか……。いやしかし驚いたぜ。何がどうしてこうなったんだ?」
「解れば苦労しませんよ」
「詳しい事は後で説明するから、とにかく今は服買ってきてくれない? スツルムが殆ど裸ん坊で可哀相」
「解った」
良い所に、ルリアとカタリナ達も引き揚げてきた。流石にルリアは一目見ただけでジータの事が解ったらしい。俺は疑っちまったな、とラカムは苦虫を噛み潰す。
「そういう事なら私も行こう。女物の下着も必要だろうから」
「宿の人に何か言われたら、私が説明しますね!」
「ありがとルリア。でも、外出る時も鍵持ってて良いって言われてるし、受付通る事無いからなんとかなるでしょ」
彼等が二手に別れようとした時、聞き慣れた声が下方から聞こえた。
「皆さんお困りのようで~」
「よろず屋さん!」
「お話は聞かせていただきました~。そういう事でしたら、うちの在庫からいくつか差し上げる事も出来ますよ~」
「本当? 助かる!」
「いえいえ~。困った時はお互い様ですから~。では早速、お三方はこちらへ~」
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