宇宙混沌
Eyecatch

第4章:火種


 背中を護ってほしい。いつだったかそう言われた。
 スツルムはその時、その言葉の意味を大して深くは考えなかった。二人はコンビを組んで戦っている。背中合わせに全方向を警戒するなんて、基本中の基本だ。
 でも、彼は本当に怯えていたのだ。
「ドランクは脱がないのか?」
 何度か身体を重ねた後の、ある夜の事だった。いつもシャツ一枚残して営みを始める夫に、何気なく尋ねた。それだけのつもりだった。
「……そんなに僕の背中が気になる?」
 明らかに動揺していた。それはスツルムが相手で、密室だからという気の緩みもあったのだろう。
「……気になる」
 スツルムも勿論、身分や役職によってはエルーンだって肌を隠す文化がある事は知っている。しかしドランクの服は背中が開いているどころか、隙間すら無い。それだけでも十分好奇心をそそるが、妻の前でも絶対に上半身裸にならないというのは、かなり不自然だ。
 致している最中にスツルムが背中を引っ掻くから、爪が直接肌を抉らない様に脱がないのだと思っていた。いや、勿論それも理由の一部ではあるのだろう。
 だが、目の前でらしくなく黙り込んだドランクの表情が、それが主たる理由ではないとはっきり物語っていた。
「僕の背中に何があっても、何も無いという事にしてくれる?」
「秘密なんだな」
「うん。こればっかりは、いくらスツルムでも僕、漏らされたら口封じしなきゃ」
 いつもと同じ穏やかな口調でそう言われる。
「じゃあ良い。そこまでして見たい訳じゃない」
「そう。ありがとう」
 そう言うとドランクは、スツルムの背中をそっと敷布に押し付けた。

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