第6話:枯れた後に花は咲く [5/6]
「スツルム達も乗って行けば良いのに」
「こいつがまだ村に用事があるんだと」
スツルム殿に指を差されて、僕は笑う。
「まあ僕達の事は気にしないでよ。お礼もちゃんと貰ったし」
「そう。じゃあまたね」
「本当にありがとう、ドランクも、皆も」
「お安い御用だよ~」
崖から飛び立つグランサイファーを見送る。暫くして、スツルム殿が僕を見上げた。
「しかし、あの短い外出で容疑者を見つけるなんて、どうやったんだ?」
「例の違法煙草、モニカさんから現物預かってたでしょ? あれを吸う真似したら凄い視線を感じてさ」
「その場で襲われなくて良かったな」
「襲いはしないでしょ。金持ってそうな顧客だなって思ってると思う」
僕はお礼の代わりに貰った、例の高そうな服装のままだった。今日はこのまま村に下りて、路地裏かどこかで大捕り物だ。
「じゃ、ちゃっちゃと一仕事片付けますか」
「はぁ……だいたいお前の仕事だろ。なんであたしまで」
「ええ~スツルム殿は僕が捕まっても良いって言うの~~~?」
「その態度、一回牢屋にぶち込まれて矯正してこい」
冗談なのか本気なのか時々判らなくなる会話をしながら、森を抜けて麓を目指す。
「にしても、不老不死かあ」
おばあちゃんの話を聞いて、セレストの力をそれに応用できるかもしれないと考えた医者の事を思い出す。
「おばあちゃんの手紙や日記には、良い医者だって書いてあったんだけどね。なにせ僕の実家のお抱えの医者だったわけだし」
「人間、欲に目が眩むと人が変わるからな」
「欲ねえ……」
死にたくない、という欲求か。
「不老不死なんて……フェリちゃんはそんなものの為に人生を滅茶苦茶にされてさ……」
「もしあの医者がフェリを唆さなければ、フェリを含めてこの島まるごと死に絶えていた可能性もあるぞ」
「そりゃそうだけど、欲した訳でもない不老不死を貰っても、嬉しくなくない?」
「本人に訊け」
「別れた後に言われても~」
もっと楽しい人生だったら、僕も不老不死を願ったのかな。
「自分で言うのもなんだけど、やる気さえ出せば、僕の魔法も結構良い線行くんじゃないかな? 若返り効果のある魔法薬とか作れたら、飛ぶように売れそうじゃない?」
「はぁ……お前、皮算用の前にまず目の前の仕事をどうにかしろ」
「痛ってぇ! ちょっとやめてよ、高い服なんだから!」
いや、今は人生楽しいって言えるかな。それでも不老不死が欲しいとは思わないし、僕はこの命が尽きる時まで、スツルム殿の隣に居られればそれで良い。
そう結論付けて一人で笑っていると、またそれが気に障ったのか切先が再び僕を突いた。
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