宇宙混沌
Eyecatch

第6章:枯れた後に花は咲く [2/6]

「フェリ」
 私の演奏を遮ったのは、イオだった。形の良い眉を下げ、何かを差し出している。
「書斎で見つけたの。フェリのお父さんの遺言書」
「私には遺産は譲らない、って書いてあるだろ?」
「どうしてわかったの?」
 私は唇を噛み、立ち上がる。楽譜と蓋を閉じた。
「なんとなくだ」
 まだはっきり思い出した訳じゃない。ただ、私は父が亡くなる直前、彼と言い争っていたような気がする。
 でも、もう一度家族に会いたくて、セレストを呼んだ気持ちも本当で。
 イオから遺言書を受け取り、読んだ。貸し出している領地はそのまま借主に所有権を譲る。その他の遺産は全て妹へ。母の名前が無いから、母が倒れてから書いたのだろう。
「ねえ、これってどういう事? フェリ、お父さんにいじめられてたの?」
「違うよ」
 寧ろ逆だろう。小言ばかり言って困らせていたのは、多分私だ。
「ただ、この屋敷にある何かを、私の自由にさせたくなかったんだと思う」
「…………」
「そんな顔しないでくれ。それに、こう書いてある方が今となっては都合が良い」
 これで、フィラの息子、つまりドランクの父親がこの屋敷の正式な所有者だ。フィラの遺言では一部を除いて全財産は息子に、という事らしいから、後から出てきた此処もそういう扱いだろう。一部、というのはドランクがピアノなどの形見を貰った分らしい。
「ドランクは?」
「グランサイファーの方に行っちゃった。鍛錬してくるって」
「そうか。これ、見せてくる」
「気を付けてね」
 屋敷を出て、風の吹く道を上っていく。頂上に着くと、ドランクが立っていた。
「ドラン――」
 呼びかけた言葉は尻すぼみになり、消える。
 だってそこにはいつかの様に、知らない誰かが隣に居たから。

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