第1話:戸惑うフェリちゃん [3/4]
「ま、あそこの家について調べたらいずれは僕の実家に行き着くんだよ。役者が要るね」
暫くして艇にやってきたドランクには、既に策があるようだった。
「なんでもやるよー! フェリの為だし」
ジータはそう言ってくれた。ドランクも頷く。
「よし。僕も一肌だって二肌だって脱いじゃうよ~ん。まずはスツルム殿、籍を入れよう」
その言葉に、私達を囲んで食堂に集まっていた騎空団員達が固まる。
「それ今言う事か!?」
「えっ、まだ籍入れてなかったの!?」
「こ、公開プロポーズとか大胆過ぎて尊死」
同時に声を上げたのは、ラカムにジータ、そしてルナールだ。ルナールはそのまま鼻血を出して机に突っ伏した。
「あたしは別に構わないが、それに何の意味がある」
スツルムは至って冷静だ。ドランクも真面目な表情を崩さないまま、今度は私に振り向く。
「フェリちゃんの戸籍をでっちあげる。僕の隠し子って事にして、遅くなったけどやっぱり籍は作った方が良いよねって話にすれば、作ってもらえると思うよ」
「そう上手くいくか?」
ラカムの心配には、お金を示す仕草をした。
「万単位で積めば黙ってやってくれるでしょ。『僕』には、十数年社交界から姿を消している以外、後ろ暗い過去なんて無いわけだし」
「隠し子を養う為に隠れ住んでいた、とでも言えば話の筋は通る、か」
「さっすがカタリナさん。理解が速くて助かる~」
ドランクはそれから計画の詳細を語る。
「とにかく、所有権を示すと言うより、そこに住んでいる既成事実を作ってしまえば良いんだよ。今だって、村や畑の方は新しく入ってきた人達が勝手にパクっちゃったんでしょ?」
「つまり、ドランクとスツルムと私の三人家族が、あの家で暫く生活すれば良いのか」
思ったより難しくないな、と胸を撫で下ろした私に、ドランクは「言うのは簡単だけどねえ」と続ける。
「フェリちゃん、もしかするとあんまり覚えてないのかもしれないけどさ。フェリちゃんも貴族なわけ」
「貴族?」
「言われてみれば、だな」
カタリナが一人納得した呟きに、ルリアが首を傾げる。カタリナは彼女や私にもわかるように説明してくれた。
「あの時代に、騎空艇で他の島まで行くこと自体、庶民にはなかなかできない事だったろう。更にフェリの妹は治療の為に一人島を出たとなれば、その先には彼女の面倒を見る後見人が居たか、家族ではなく使用人の様な立場の人間が同伴していた、と考えられる」
「ビンゴォ! その後見人って言うのが、僕の曾おじいさんでさ。おばあちゃんはそのままその家の次男坊と結婚したって訳」
「そうだったのか」
確かに、ドランクの実家はかなり爵位が高いようだったし、余所者で病弱の妹が何のコネもなく大恋愛の末に嫁いだ、という方が不自然か。
「で、だ。僕達が怪しまれずに既成事実を作るには、貴族として振る舞わないといけないって事」
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