第3話:意識しちゃうジータちゃん [2/3]
「団長さん達はどうされたんですか~?」
シェロカルテがレストランの様子を見に来た。ジータの姿が無い事に気付き、カタリナに尋ねる。
「ドランクが行方不明になっていてな。ラカムとスツルムと一緒に探しに出かけた」
「なんと!」
シェロカルテが目を丸くし、それからおろおろし始める。
「それは困った事になりました~」
「何がだ?」
「実はですね……」
その頃、少し離れた席でアオイドス達が自らの異変に気付く。
「元に戻った様だな」
帯はきつくは無いが、アオイドスはユカタヴィラの裾から脚が覗いている。
「アオイドス! ジャスティン! ちょっと来てくれ」
カタリナに呼ばれる。食事を中断してそちらに向かうと、しおらしくしたシェロカルテが話し始めた。
「夜には効果が切れるので、この場で種明かしをしようと思っていたのですが……」
「なな、なんだお前……」
「男になった……」
エルーンとヒューマンの二人組は目の前で起こった事に気を取られ、ジータ達が来た事に気付いていないようだった。ドランクの方はしっかりと三人の姿を視界の端で捉え、慌てて氷の刃を融かす。
「ドランク!」
スツルムが宝珠を投げた。男達がスツルムを振り返ったのと同時に、宝珠はドランクの掌にすっぽりと収まる。
「ありがとスツルム殿!」
そこからは瞬く間に終わった。ドランクの魔法で縛り上げられ、男達は地面に転がって呻く。
「ド、ドランクだって?」
「どういう事? え? 同一人物?」
「いや~危ない所だったねえ」
ドランクはこれ見よがしに宝珠を弄びながら、しゃがんで男二人に耳打ちする。
「刺されて死ぬより憲兵団に処罰される方がマシでしょ?」
それ以上言ったら今度こそ殺す、と言葉の裏で圧力をかける。男達は口を噤んだ。
とは言え、少なくとも三人殺しているんだ。此処で死なずとも、命で償う日が先延ばしになっただけかもしれない。
あまり突くと藪蛇だ。自分の過去の悪行は証拠不十分で今更捕まりはしないだろうが、目を付けられる事は避けたい。
「ねえドランク、これ一体どういう状況?」
「団長さん。あっ、そうだ」
ドランクは捕まっていた少女の事を思い出し、倉庫の奥から連れてくる。
「僕とこの子、こいつらに誘拐されちゃったんだよね。余罪もあるみたい。憲兵さん達呼んできてくれる?」
「わかった」
「俺も行く」
ジータとラカムは憲兵団の詰め所へ向かう。道中、アハハとジータが笑った。
「スツルムの言った通りだった!」
「笑い事じゃねえぞ。余罪があるって言ってたから、被害者が何人居る事やら」
ラカムはそう言うと、急に不安になってジータの手を握った。もう日も暮れるし、ジータはこんな格好だ。俺が見といてやらねえと。
掴まれたジータの方は彼の意図が解らず、顔から火が吹き出そうな程赤くなった。
えっ、何これ何これ!? このタイミングでそういう事する!?
「おう、仲良さそうじゃねえか」
街を駆ける二人に、老兵が声をかける。オイゲンが長いマントを頭から被った人物を連れていた。
「オイゲン。そちらさんも久し振り」
顔をよく見るとアポロだった。
「あの二人も来ていると聞いてな。私が出向いてやる方が移動する人数が少なくて良いだろう」
「ってな訳で宿に連れてく所だ。もしかしてデートの邪魔だったか?」
オイゲンに言われて、今度はラカムが赤くなる。
「んな呑気な話じゃねえよ! 丁度良い、俺が一人で走った方が早いからジータの事連れて帰ってくれ」
一体何なんだ。放り出されたジータは駆けて行くラカムの背中を睨む。
「ところでジータ、なんでそんなでかい服着てるんだ?」
「話せば長ーい」
オイゲンとジータでアポロを守る様にして、帰路に着く。
「あと、スツルムとドランクも今港の方に居るの。事情聴取とかもあるだろうから、ゆっくり話せるのは明日の朝になっちゃうかもね」
♥などすると著者のモチベがちょっと上がります&ランキングに反映されます。
※サイト内ランキングへの反映には時間がかかります。