宇宙混沌
Eyecatch

将来の夢 [4/5]

 スツルム殿の弟妹達も、もうかなりの歳だ。葬儀に駆けつけたのは、甥や姪が殆どで、あとは僕と、娘と、その家族だけだった。生きているならドナさんやジータさん達にも知らせたかったけれど、もはや連絡先がわからない。
 スツルム殿を空の底に見送る。こうして誰かの葬儀にちゃんと出るのは、おばあちゃんの時以来か。
 瞬く間にスツルム殿を包んだ袋は見えなくなった。仮に境界の世界に落ちたとしても、死人が蘇る事はない。
「君はまだ、僕にもああして落ちてほしい訳?」
 皆が撤収した後も、僕は空の底を見つめていた。その隣には、娘も付き合っている。
「ええ」
「理由は?」
「口止めされました。ちゃんと自分で気付くからと」
 自分で気付く、か。不可解な事はスツルム殿も言っていた。
 二人の言葉を組み合わせて、やがてパズルは完成する。
「……上手くいく筈だ、って解ってても、飛び降りってのは怖いものだよ」
「そうですよね」
「君の言い草じゃあ、今度は無傷ってわけにはいかないみたいだし」
「それでも突っ込んでいく所は嫌いじゃなかったと、母は言ってましたよ」
 苦笑する。スツルム殿的には、最高の褒め言葉かな。
「それじゃあ」
 僕は覚悟を決めて立ち上がる。
「またね」
 娘の方を向いて、重心を後ろに傾ける。背中からひっくり返って、下へと真っ逆さま。
「ああ、でも」
 空気を切る轟音の中、呟く。
「君にはこれが最期だったのか」

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