「やっと帰ってこれた~」
僕は赤くない土地に安堵した。戻ってこれた。空の世界に。
「ま、半年で神火が出て、上手いことそれを利用できたのは不幸中の幸いかな」
もう二度と、騎空艇の間を身一つで飛び移ったりしないでおこう。
僕は爆風で乱れた服を整えながら、街の様子を見る。何か……変だ。
「そういや、あっちの人達もバラバラな時代から来てたから、こっちに戻ってくる時も時間ずれちゃうのかな?」
街並みからして――島だと思うんだけど、僕の記憶にある店が無かったり、あるけど急に古びていたり、逆に改装されて綺麗になっていたり。此処は、僕が赤き地平に落ちた時よりも未来らしい。
とにかく、今が何年なのかを調べよう。本屋か文房具屋に行けば、カレンダーが売られている筈だ。
近くの書店に入る。魔法書コーナーを経由すると、僕と同名の著者による魔法書が、目立つように表紙を上にして積まれていた。奇遇だな、名字はまあまあ珍しいんだけど。
カレンダーを探していたら、先に手帳コーナーを見つける。これで良い。
一つ手に取り、巻末のカレンダーを見て腰を抜かしかけた。
「嘘でしょ……」
僕が家を出てから、六十年もの歳月が経っていた。
暦が違う? いや、場所は――島で間違いないし、急に暦を変えるなんて無い――というかそんな事があったなら、実際に過ぎた時間は六十年どころじゃないだろう。
「……スツルム殿!」
僕は手帳を棚に戻し、かつて住んでいた家へと急ぐ。
本当に六十年経っているなら、彼女もすっかりおばあちゃんだ。もしかすると、もうこの世には居ないかもしれない。