宇宙混沌
Eyecatch

第6章:寝た子を起こしたベンジーちゃん [2/6]

「あった」
 ロープを辿って小一時間ほど、昨日と同じ道を登る。その先に焚き木の跡と、摘まれた葉っぱや枝や根っこの入った籠がいくつか置かれていた。
「この中のどれか、或いは全部に、原因となる何かが入っている、と」
「どう、ルリア? 何か感じる?」
 団長さんの問いに、ルリアちゃんは目を閉じる。
「……星晶獣の気配は、やっぱり微かにしかしません。多分、眠っているんだと思います」
「休眠中の星晶獣の力や体の一部が、僕達に影響を及ぼしてるって事かなあ?」
「わかりません。可能性としては、ありますけど……」
 わからないって言ってるのに、問い質して困らせるのも可哀想か。
「ひとまず、中身を精査しよう」
 ユーステス君が提案する。
「待って」
 早速取り掛かろうとした団長さんを、すんでのところで制止した。
「紙に加工したり燃やしたりしなくても、持ってるだけで道に迷っちゃうようなヤバいのが混じってるんだよね? それって、触ったらうっかり暴れちゃうような物も入ってたりしないかな?」
「昨日手で集めた物ばかりだぞ。可能性はあるが、起こるかどうかわからない事を心配していてもしょうがない」
 スツルム殿がそう言って、籠の一つを取った。団長さんも、一度止めた手を動かし始める。
「これは、こっちのと同じ種類だな」
 フェリちゃんが小さな木の葉の形を確認してから、地面に置く。
「ああ、ジータ、それは違う。この根は確か……これだ」
 アオイドスが団長さんの間違いを訂正して、正しい山へと誘導する。
「アオイドス、やけに詳しいね」
 フェリちゃんの実家は……僕のお婆ちゃんの一家は、魔法薬を作っていたらしいからともかく。
「譜面の材質にこだわりがあってな。自然と詳しくなってしまった」
 いや、知識もそうだけど、そんなすいすい鑑定出来るもんなの? ほとんど彼が分類していくので、スツルム殿なんかは手持ち無沙汰になって石ころを蹴って遊んでいる。ルリアちゃんが楽しそうにその横に並んで、一緒に蹴り始めた。
「嘘だあ。絶対毒薬か何かの勉強してたでしょ」
「何故わかった」
「冗談で言ったのにマジなのやめてよ……」
 これだから闇に片足突っ込んだ傭兵は。僕も人の事は言えないけど。
 アオイドスは僕の顔を見て、珍しく可笑しそうに笑った。
「冗談だ。家を飛び出してすぐは、金に困ってその辺の草でも何でも食べたからな。紫陽花もその時に食べて酷い目に遭った」
「朝顔みたいなやつは?」
「まだ味見していないな」
「朝顔みたいなのって?」
 団長さんが興味津々で訊いてくる。
「僕達が話してるのはねえ、全部毒があるの。キノコに限らず、その辺に生えてる植物を食べるのはおすすめしないよ」

「だいたい判ったな」
 ユーステスの言葉にアオイドスが頷く。品種が特定出来なかったのは、葉っぱと枝と根っこ、それぞれ一種類ずつ。
「さて、どうしようか」
 これを騎空艇に持って帰る事は出来ない。もし原因であれば、またぐるぐると同じ場所を巡らされてしまう。
「誰か試しに吸えば良いんじゃないか?」
「スツルム殿ってたまーに大胆な事言うよねえ」
 まあでも、だいたい昨日ので何が起こるのかはわかってるし、やってみるか。
「ほ、本当に吸うのか?」
 指先から火を出した僕に、フェリちゃんがたじろぐ。
「うん。ちょっと気になる事もあるし」
 昨日の幻覚、途中で途切れて終わった気がするのだ。ベアトリクスはともかく、スツルム殿もラカムも団長さんも、辛い過去を見せられた割には妙にすっきりした顔をしている。僕も最後まで見れば心の靄が晴れるかもしれない。
 バンダナで作ったマスクを外す。僕は品種不明の小枝の一つを取ると、火を移した。

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