「おばあさまの、お墓に、あたしも?」
「そ。前に会ったフェリちゃんの妹ね。前にスツルム殿が呼びに来てくれた島にあるんだけど……」
「ああ、なんでかお前が強盗に仕立て上げられてたやつ」
「そうそう! あれ酷いよね~。どう見たって僕の方が善良な市民じゃない?」
話を逸らすと長くなる。あたしは一言「行く」とだけ言った。
いつぞやの森は相変わらず鬱蒼としていて、やはり警備はスカスカだった。
ドランクの父親はあの時、あたしの事をどう思ったのだろう。通りすがる屋敷の窓を見つめながら考える。恋人か何かだと思ったなら、ドランクが戻って来たって、末代になる事は想定できただろう。それともそうさせない為にあたしを牽制したつもりだったのだろうか。
考えたって答えは出ない。ドランクに声をかけられて顔を上げると、目の前には雲海が広がっていた。
墓は手を入れずとも十分綺麗だったが、形式的に石を磨いて雑草を取る。土産物を供えた。
「他の人の墓は?」
「街の方にあるよ。此処はね、霧の島の方角だから、おばあちゃんの希望で」
「参らなくて良いのか?」
「うーん……人通りの多い場所にある墓所だから、目立つのは嫌かな」
マントを翻し、ドランクは来た道を戻る。そのまま誰とも会わずに敷地を出た。
「……お前の旅の目的はもうなくなっただろ」
訊かないでおこうと思っていたが、堪えられなくなった。
「いつまで続けるつもりなんだ?」
数歩先を歩いていたドランクが足を止める。振り返ると、不安を押し隠せていない笑顔で言った。
「スツルム殿が『嫌だやめたい腰を落ち着けたい』って言うまで」
「そうか」
あたしはそのままドランクを追い越す。
「待ってよスツルム殿~」
足を速める。今のところ、言うつもりは今後も無い。