宇宙混沌
Eyecatch

嫌と言うまで [6/7]

「服を買いに行きたい」
「うんうん、行こ行こー」
 次の休日、ドランクを連れて街に出る。
「折角だし、仕立ててもらうか」
「なんか今日は財布の紐が緩いね」
「この前の休みに臨時収入があったからな」
「えっ、仕事してたの? 駄目だよちゃんと休まなきゃ~」
 すっかりいつものドランクだ。キレて物を投げたり舌打ちしたりしない。
「お前も服を買え。十分出せる」
 というより、息子の服もどうにかしてくれというメッセージと受け取った。
「ええ? それはなんかなー」
「あたしの買う服が着れないって言うのか」
「とんでもございません。着させていただきます」
 ドランクは既製品でもサイズが合うのが豊富なので、それぞれ別の店で服を揃える。それでも使い切れず、揃いのマントを買い足した。
「良いね~。見た目も漸くコンビっぽい感じ?」
 コンビ、か。夫婦だったような気もしたが。
 その夜、ドランクがこんな話をした。
「恋人やそれに準じた間柄での装飾品のプレゼントって、それぞれ意味を持ってるんだよね~」
「どんな?」
 与太話なのか世間話なのかはわからないが、いつもの様に適当に相槌を打つ。
「口紅は、それを塗った唇にキスしたいって意味」
「ふぅん」
「服だとそれを脱がせたいって意味」
「……あ……」
 そういう意図は無かったんだが。でも、もう半年以上していないし……。
「スツルム殿ってば、茹でダコみたいになってる」
 ドランクは笑っておでこにキスをする。そのままベッドに押し倒された。
「ん……ゴムは……?」
「どっかやっちゃった。でも代わりにこんなのがありま~す」
 ドランクは枕の下から小箱を取り出す。中身は揃いのピアスだった。
「いつの間に」
「さていつでしょう」
「どうせこれも何か意味があるんだろ?」
「まあね」
 そのまま口付けて、続きは有耶無耶にされた。
 嫌と言わなかったから、その日は久々に甘い夢を見た。この夢が見られるなら、異種族だとかは些細な事じゃないか。それからはそう思うようにした。

闇背負ってるイケメンに目が無い。