宇宙混沌
Eyecatch

大人の恋


 グランサイファーの操舵士の腕は流石だ。この乱気流の中でもほとんど揺れない。それが逆に考え事をする余裕を持たせて、なかなか寝付けなかった。
 日付が変わっても寝付ける気がせず、ラードゥガに向かった。酒を飲めば少しは眠くなるだろう。
「あら、お客さんね」
 ファスティバは副料理室を閉めようとしていたところだった。
「もう終わるのか? なら……」
「構わないわよ。いつもより早いけど、誰も居なくなったから切り上げようとしてただけなの。ご注文は?」
「眠くなりそうなのを」
「スツルムちゃんはこれが好きだったわよね。ミルクで割っても美味しいのよ。すぐ温めるわね」
 暫くして出された酒を舐めていると、ファスティバは他に相手をする客も居ないので、自然とあたしに話しかける。
「眠れないなんて、何か気がかりなことでもあるの?」
「別に……。騎空団には関係ない」
「あら、じゃあ相棒さんの事かしら」
 勘が鋭いな。まあ、四六時中一緒に居るのだから、まずドランクを疑うのは当然か。
「少し、嘘をついてしまって」
「スツルムちゃんが? 珍しい。本当の事を言い出せないのね?」
「そんなところだ」
「嘘なんてドランクくんはしょっちゅうついてるんだから、気にしすぎないで大丈夫よ。何か理由があってついたんでしょう? それを解ってくれない相手じゃないじゃない」
「ん……」
 それは、そうかもしれないが。はっきりしない相槌に、ファスティバは何かを悟ったらしい。
「なるべく早く本当の事を言わないと、手遅れになる類のものかしら?」
「そう……かも……」
 いや、そうだろう。あたしにその気が無いと言われてもなお、しつこく結婚を迫ってくるだろうか。まあ、コンビの件はかなり強引だったが……。でもドランクはああ見えてまめだし、スペックが良いから女にはモテる。あたしなんかに拘る必要も……。
「それはドランクくんの意思決定に関わること?」
「なぜ解る?」
「だって貴方達、仕事みたいに機械的に物事が進んでしまう場合は、私情を挟まず最善の行動が取れるでしょう? そうじゃないってことは、進む為の答えを出すのも誰かの心ってことじゃない?」
「……その通りだ」
 ファスティバは飲み終えたカップを取り、微笑む。
「だったら信じてあげましょうよ。察しの良いドランクくんの事だから、もしかするともう気付いて待っているのかもしれないわ。だとしたら、本当の事を言っても、貴方の望まない答えは出てこない筈よ」
「そうだろうか」
「そうねえ、上から目線になっちゃうけど、もう一つアドバイスするなら……スツルムちゃんの望みを正直に伝えておけば良いのよ」

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