囀り [2/3]
「おいしいお仕事だったねえ」
仕事終わり。あたし達は現地の酒場で一杯やる。
ドランクはあまり飲める方ではないが、此処の地酒は口に合うらしい。金が入った事もあって、さっきから器を空にしては次を頼んでいる。
「おい、ペースを考えろ」
あたしも舌鼓を打っていたら、止めるのが遅れた。隣を見れば、ドランクは既に半分意識が飛んでいる。
「へ、なに?」
「もう飲むな」
「えー」
「えーじゃない」
勘定を済ませ、店から引きずり出す。支えてやらないと千鳥足でこっちがハラハラする。
「重い……」
「おもくないよー」
そんな体重を気にする女学生みたいな事を言われても。いくら身長差があると思ってるんだ。
「……クソッ」
とてもじゃないが宿まで運べる気がしない。かといって道に放置して財布や武器を盗まれれば、相棒のあたしも困る。
裏通りをえっちらおっちら歩いていると、やけに派手な外装の宿屋を見つけた。
此処が何をする場所なのか知らない、なんてかまととぶるつもりは無い。
「おい、ドランク。今日もう此処で良いか?」
「どこでもいい~」
見てないな、こいつ。まあでも、あたしももう休みたい。肩にかかるドランクの体重を担ぎ直し、あたしはその建物を目指した。
「……ラブホテルじゃん、此処」
ドランクの酔いが醒めたのは、日付が変わる少し前の事だった。あたしは瞑想を中断する。
「普通の宿まで運ぶのが面倒だった」
「申し訳無い。別の宿行きましょう」
醒めた、と思ったがまだ酔ってるな。言葉遣いが変だ。
「良いからもう寝ろ。それに移動したらまた金がかかるだろ」
「スツルム殿と同じベッドで何もしない自信無いよ」
……どういう意味だろう。と、都合の良い時だけかまととぶれたらどんなに良いか。
「お前、そういう目であたしの事見てたのか」
「うん。ずっとね」
「……からかってるのか? というか、やっぱりまだ酔ってるだろ」
本気な訳ない。そう思って、再度寝かしつけようと掛け布団に手を伸ばした。
その腕を、ドランクの大きな手が強く掴む。
「ドランク?」
「酔ってるのは否定しないけど、からかってはない」
ドランクのもう一方の手が、あたしの腰に回る。
「スツルム殿が良いなら、此処に居るよ」
あたしも酔っていたのかもしれない。近付いてくる顔を、拒まなかったから。
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