宇宙混沌
Eyecatch

反省しないと出られない部屋 [5/6]

「お話終わりました?」
 僕が長風呂から上がると、居間には黒騎士一人が残っていた。
「結局何が恥ずかしかったんだ?」
 普通に甘酸っぱい良い話だったが……と首を傾げる黒騎士に、僕は顔を覆う。
「そう思ったならそれで良いけど絶対口外しないでくださいね」
「何を」
「アルビオンの生徒だった事とか貴族だって事とかキレて人殴る不良だった事とか密航した事とかそりゃもう全部!」
「若気の至りという感じで微笑ましいが」
「あー!! 本人にとってはアルビオンを出るまでの人生は黒歴史なの~~~」
「出てから働いた悪事に比べたら可愛いものだろう」
 座れ、と言われて僕は向かいに腰を下ろす。酒はもう残っていない様だ。
「カタリナ・アリゼと顔見知りなら話は早い」
「顔見知りって言うか、目立つ子だったから薄っすら記憶にあるだけですよ。向こうは僕を知らないかもね。確か、今は『機密の少女』付きでしたっけ? 出世したよねー」
「ああ。その少女を連れて逃げ出した」
 水でも飲もうかと立ち上がりかけていたが、やめて座り直す。
「そんな重大情報、寝る直前に言わないでくださいよ。明日休日返上?」
「いや、一先ずポンメルンが追っている。奴がしくじればお前達の手も貸さねばならんだろうな」
 ポンメルンか。彼の力を侮っている訳ではないが、白刃戦になれば魔晶無しでの勝ち目は無いだろうな。
「実は、僕もアリゼとは手合わせした事無いんですよ。同じ級になった事が無いので」
「だろうな。……堅物で扱いづらい所もあったが、あれでも帝国軍の期待の星だった。油断するなよ」
「死んだら骨は拾ってくださいね」
 黒騎士は答えず、タオルを持って風呂場へ。
「機密の少女が機密じゃなくなっちゃったかー」
 これから起こる大きな波乱の予感に、僕は不安になるどころか、楽しみで笑いを堪える事が難しかった。
 彼女達もまた、部屋を出たのだ。今は敵とはいえ、束の間でも彼女らが自身の選択で開いた道の先を見られる事を、ささやかに祈った。

闇背負ってるイケメンに目が無い。