「準決勝の件だが」
スツルムはやっと来たか、と思った。昨日の内に話し合っておけば良かったが、自分もこれからどうしたいかが決めきれずにいた。
「俺に勝たせてほしい」
バレンティンが言った。スツルムはややあって、拒否する。
「決勝……ドランクが勝ち残ってくるかもしれない」
「ああ」
「あれはあたしが……いや、互いに互いを選んだ相手だ。あたしが方をつける」
「俺は彼に謝りたい事がある」
「は?」
予想外の言葉に、スツルムは首を傾げる。
「全て話そう」
自分の事、彼の事、そして主催者の事を。
「さあ! いよいよ大会も最終日! まずは準決勝から。一戦目は傭兵のスツルム対、元残虐三兄弟のバレンティン!」
「結局どっちが残る事にしたんだろう?」
ジータはその結果を聞いていなかった。ラカムも知らないと首を振る。
「レディー、ファイト!」
「両者共に剣を構え相手に向かう! 流石に準決勝ともなると、互いの動きが早くて実況が追い付かない!」
「おいおい、戦ってるじゃねえか」
ラカム達が焦ったが、暫くするとスツルムが動きを止めた。バレンティンもそれに倣う。
「お前の太刀筋、ドランクに似てるな」
そう言って剣を床に落とす。
「さっきの話、信じる事にする。降参だ」
またもや観客からはブーイングの嵐。しかし二人は頷き合うと、舞台から降りた。
「何だったんだ、今の」
「さあ……」
ラカムの問いに、ジータも首を傾げるしかない。
今日は試合数が少ないので、試合の合間には長めの休憩時間が挟まれていた。午前中にドランクの出場する準決勝第二戦が行われた後、午後に決勝が行われる。
「ジータ!」
そのまま客席に座って時間が過ぎるのを待っていると、モニカがやって来た。
「さっきの試合、どっちが勝った?」
「バレンティンだ」
ラカムが答えると、モニカは気が抜けた様に息を吐いた。
「そうか、それならわざわざ伝える必要もあるまい」
「何かあったの?」
ジータに問われ、モニカは声を低くして先程ガンダルヴァに聴いた話を繰り返す。
「そんな……」
青白い顔になったジータの背中を、ラカムが撫でる。
「我々はこれから、主催者の居場所を探る。二人は試合を見届け、優勝者が決まったら、決して主催者の元に行かない様に伝えてくれ」